2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23780037
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Research Institution | Fukuoka Agricultural Research Center |
Principal Investigator |
池上 秀利 福岡県農業総合試験場, その他部局等, 研究員 (40502414)
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Keywords | イチジク / 着果 / 生長円錐体 / 節位 / FcFT1 / 空間的勾配 / 光 / 自律的促進経路 |
Research Abstract |
ESTデータベース検索及びゲノムライブラリーのスクリーニング等により、イチジクPEBP遺伝子計8種類を同定し、ゲノム構造を決定した。これら8種の遺伝子について花成ステージが異なる新梢各節位の葉と生長円錐体における発現量を調べた結果、FcFT1を含む2種遺伝子の発現量に空間的な勾配が見られ、同発現量と着果節との間に相関が認められた。FcFT1上流制御遺伝子候補としてCO遺伝子及び自律的経路上の遺伝子12種についても解析したところ、一部遺伝子の発現量に同様の勾配が見られ、FcFT1発現制御と関連がある可能性が考えられた。FcFT1の詳細解析では、FcFT1が葉と生長円錐体の両方で特異的に発現しており、光誘導性を有し、生育期間を通じて定常的に発現していることが明らかとなった。また、FcFT1プロモーター領域(3kbp)及びFcFT1以外のFTホモログ2種の機能解析のためのシロイヌナズナ形質転換体3系統を作出した。一連の結果から、イチジクにおいて生殖成長相が長期的に継続することの原因遺伝子は日長に関係なく光刺激により発現誘導されるFcFT1であると考えられ、その制御遺伝子候補のいくつかが推定された。また、FcFT1等遺伝子の発現量バランスの制御とその変遷に基づいたイチジク花成(着果)仮説モデルを構築した。本モデルはイチジクの花成時期だけでなく、花序の形成様式を説明できる点で有用であると考えられる。本モデルとモデル植物等の他の種における花成分子モデルとの比較を行うことにより、イチジクに特徴的な花成システムが明らかになると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PEBP遺伝子ファミリーの網羅的同定及び花成ステージが異なる各節位における同遺伝子群の発現解析に基づき、主要な花成制御因子をFcFT1とFcTFL1-2の2種類に絞り込むとともに、同遺伝子の発現様式に基づいたイチジクの基本的な着果花成モデルを構築することができた。FcFT1の主な制御経路が光依存的(光)経路と自律的経路であることを明らかにするとともに、いくつかの上流制御因子候補を推定した。加えて、FcFT1プロモーター機能解析のためのシロイヌナズナ形質転換体を作出することができた。上記で明らかとなった、また今後明らかとなるイチジクの花成制御メカニズムを他の植物種におけるメカニズムと対比することにより、イチジク着果モデルの特異性を解明することが可能であると考えている。成果の公表については平成24年度にFcFT1の特徴とPEBP遺伝子ファミリーの同定について2回の学会発表を行い、現在前者について論文投稿中であり、後者について論文作成中である。また平成25年度にはイチジクの花成制御モデル仮説について成果の公表を行う予定である。以上のことからおおむね当初の計画通りに課題は進行していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度の研究結果からFcFT1の主な制御経路が光経路であると考えられたことから、24年度以降は光経路上の遺伝子群について重点的に解析を行う。イチジク連続着果性の主要因であると予想されるFcFT1の制御因子の探索については、光受容体、概日時計因子、その他の主要なトランス制御転写因子群を含めて追加の遺伝子発現解析を行いさらなる絞り込みを行う。プロモーター解析では光刺激・上流因子とFcFT1との具体的な制御関係を検証する。また24年度に作出したFcFT2,FcFT3導入シロイヌナズナ形質転換体の形質評価を行い、イチジク花成に対するこれらFTホモログ寄与の可能性を併せて検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
直接経費については、研究費の約50%をFcFT1制御機構解明のためのプロモーター解析及び次世代シークエンス解析に使用する。残りの研究費については、学会発表のための旅費や作成論文の校正費用などに充てる予定である。
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