2011 Fiscal Year Research-status Report
生物的・非生物的ストレスと病害抵抗性のクロストークに関わるタンパク質因子の探索
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23780038
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
安藤 杉尋 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (10442831)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 抵抗性遺伝子 / 病害応答 / 環境応答 |
Research Abstract |
研究計画に従い、キュウリモザイクウイルス黄斑系統抵抗性遺伝子RCY1と相互作用するタンパク質を探索するため、(1)Blue-native PAGEによるRCY1タンパク質複合体の検出、(2)αHA-agarose beadsを用いた免疫共沈、(3)磁気分離システムを行った。(1)について可溶性タンパク質画分注のRCY1-HAタンパク質複合体は150~200kDaと推定された。界面活性剤添加条件の検討の結果、0.1 % DDMを添加することでより、高分子の複合体として検出できることが分かった。そこで、この条件で(2)(3)により相互作用因子の単離を試みたが、相互作用因子は検出できず、免疫共沈反応中の相互作用因子の解離が推察された。そこで、研究が計画通り進まない場合の対応策に従い、酵母Two-hybrid法による相互作用因子の探索を行った。RCY1はCC-NB-LRR遺伝子であることから、BaitとしてCC-NBドメインを用いた場合に、植物の病害応答に関わることが知られているWRKY70等が単離された。現在、WRKY70遺伝子のT-DNA挿入変異株を入手し、RCY1-HA導入形質転換体との交配を行っているところである。一方、非生物的ストレスに対する応答としては、RCY1-HA高発現体は低温・暗所処理に対して野生型に比べて弱い傾向があることが分かってきた。今後、本条件下におけるWRKY70の発現変動や変異体のCMV応答等の表現型を解析することで、シグナルのクロストークについての知見が得られると期待される。 これまでの研究は、当初計画した通りには進まず、その対応策に従って進行している状況である。しかし、WRKY遺伝子は抵抗性遺伝子と相互作用する例も知られており、今後それらの知見と比較を行っていくことは病理学的にも意義がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでの研究は、当初計画した通りには進まず、その対応策に従って進行している状況であるため、当初の目標から考えれば達成度は低いと言わざるを得ない。しかしながら、その中でも、計画通りの対応策により、候補遺伝子を得ることができ、ある程度のリカバリーは達成できている状況と判断できる。従って、現在の遅延もなんとか取り戻せる程度と判断している。また、当初の計画においても、結果的に候補タンパク質の単離には至らなかったが、実験はほぼ計画通り行った結果であるので、一定の評価の対象となると考えている。実際、今後候補遺伝子を用いた相互作用の検証にはこれまでの条件検討等の知見が役に立つと考えている。さらには、非生物ストレスがRCY1-HA過剰発現体に与える影響について知見を得ることができ、今後の解析の足掛かりを得ることができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在得られている候補タンパク質(WRKY70等)については、当初の実施計画に戻り、T-DNA挿入変異株とRCY1-HA形質転換体のホモラインの作成、過剰発現体の作出等を行い、得た植物体の各種ストレス条件下でのCMV感染応答を詳細に解析する(HR・細胞死の程度、ウイルスの増殖、活性酸素生成レベル、Pathogensis-related protein (PRタンパク質)遺伝子の発現レベル、各種ストレス耐性等への影響など)。さらには各種変異体(SA関連: eds5, pad4; JA関連: jar1, coi1;ET関連: etr1, ein2; S A/JA関連: ssi1; Defensome関連: rar1, sgt1; ABA関連: abi1, era1, etc.)等との掛け合わせを必要に応じて行い、シグナル伝達系の解析を行う。また、遅延している候補遺伝子の発現解析によるストレス応答性への関与の推定、N. benthamianaの一過的発現系(Agroinfiltration、myc-tagなどを使用)を利用したRCY1との相互作用を検証などを早急に行う。 また、酵母Two-hybrid法によるスクリーニングも一部終了していないので、引き続き行い、得られた候補タンパク質については、随時上記の計画に沿って解析を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度においては、研究が計画通り進まず、当初予定していたタンパク質のアミノ酸配列解析(外注)が行えなかった。このため、予定していた研究費を次年度に繰り越すこととなった。一方で、このための対応策を計画通り行うため、酵母two-hybird法に関わるキット、試薬、培地が予定より大幅に必要となった。一部については既に購入済みではあるが、次年度にも、さらなるスクリーニングを計画しており、繰り越した研究費はこのための費用に充てる予定である。また、研究の遅延を取り戻すため、形質転換については一部を外注に出す計画であり、このための費用としても必要となる。 次年度に請求する研究費については、候補遺伝子が得られ始めたことから、おおむね当初の研究計画に従って使用する。具体的にはベクターコンストラクションや形質転換、発現解析、タンパク質相互作用解析等に使用する分子生物学研究試薬・キット類の消耗品や一般試薬、ガラス器具、プラスティック器具等の消耗品。また、成果の公表や情報収集に必要な旅費等の経費を予定している。
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