2011 Fiscal Year Research-status Report
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23780040
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
別役 重之 東京大学, 教養学部, 特任助教 (80588228)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | シロイヌナズナ / 植物耐病性 / 植物病理 / 感染生理 / 植物 / 防御応答 / 国際情報交流、米国 / 国際情報交流、ドイツ |
Research Abstract |
植物の抵抗性(R)タンパク質は、病原体由来の非病原性(Avr)タンパク質を認識することで非常に強力な防御応答である過敏感反応(HR)を誘導する。本研究においては、その分子機構の詳細を明らかにすることを目標に、シロイヌナズナ葉におけるモザイク的な一細胞でのAvr遺伝子誘導発現系を構築して、擬似的に一細胞レベルでのRタンパク質活性化を誘導し、その周辺細胞へのHRの伝播様式を詳細に検証する。そのために、Cre-Loxシステムを用い、Avr遺伝子を弱い熱ショックにより細胞自律的に発現する形質転換シロイヌナズナを作出する。これまでもAvr誘導発現型植物は研究されてきたが、薬剤誘導型で非常に多くの細胞で発現するため詳細な細胞レベルでの解析は行われていなかったため、Cre-Loxによる標的一細胞でのAvr誘導系は非常に画期的である。現在までに、Cre-Lox誘導型AvrRpt2-sGFPコンストラクトを発現する野生型シロイヌナズナをライン化し、HSP:CRE形質転換植物と交配して得られた植物個体を用いて、熱ショック誘導特異的にHR細胞死を誘導出来ることが明らかとなった。現在、AvrRpt2-sGFPの擬似的な一細胞発現系を目指したモザイク状発現を誘導するための熱ショック誘導系の詳細な条件検討を行っている段階である。今後さらに、Rタンパク質や既知の各種耐病性関連遺伝子欠損変異体と交配し(現在交配中)、その影響を調査する。また、防御応答マーカー遺伝子(サリチル酸より誘導されるPR-1およびサリチル酸合成に関わるSID2)プロモーターをYFP活性により検出する形質転換植物ラインが構築が完了し、現在、上記Cre-Lox誘導型AvrRpt2-GFP植物と交配中である。また、エストロジェン誘導型AvrRpt2-sGFPを発現する形質転換体植物ラインも構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
植物のRタンパク質が病原体由来のAvrタンパク質を認識することで誘導される、非常に強力な植物防御応答反応である過敏感反応(HR)誘導機構を明らかにするために、本研究では、一細胞もしくは組織特異的なAvrタンパク質誘導発現系を構築し、同時に下流防御応答マーカー遺伝子活性を可視化することで、Avr認識細胞から周辺細胞へのHRシグナル伝播様式を明らかにすることを目的としている。現在までに、Cre-Loxシステムを用いて、Lox組換え依存的にAvrRpt2-sGFPを誘導発現する野生型シロイヌナズナをライン化し、HSP:CRE 形質転換植物と交配して熱ショック誘導型AvrRpt2-sGFP誘導発現植物体が得られた。さらに、エストロジェン誘導AvrRpt2-sGFP発現形質転換植物ラインも作出した。これら植物を用いて、熱ショックやエストロジェン添加実験を行い、これら処理特異的にHR反応様の細胞死や生育阻害が確認でき、これらAvr誘導発現植物体の有用性が確認できた。現在、AvrRpt2-sGFPの一細胞発現系構築を目指し、適度な熱ショック誘導によるモザイク発現など、さまざまな誘導条件検討を行っている段階である。AvrRpt2-sGFP発現植物生育培地から、防御応答誘導活性は得られなかったため、さらなる条件検討が必要である。また、防御マーカー遺伝子PR-1おおよびSID2のプロモーターレポーター形質転換植物ラインも構築でき、各種病原体を接種し、それらレポーターの発現挙動を確認したところ、非常に興味深い発現パターンを示した。このことより、これらレポーター形質転換体の有用性が確認できただけでなく、両遺伝子発現は病原体感染時に非常に厳密に制御されている様子も明らかとなった。これらレポーター植物に各種病原体を接種し、レポーター発現様式の詳細な解析も行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度には、本研究の主題である「Avr認識細胞から周辺細胞へのHRシグナル伝播様式の解析」のために必要な各種形質転換体の作出が非常に順調に進んだ。平成24年度には、基本的に当初の計画に沿って、これら形質転換体を用いて詳細な解析を行って行きたい。しかし、特に一細胞Avr発現誘導系には熱ショック誘導型Cre-Loxシステムが非常に有望なため、本系の熱ショックによるモザイク状発現誘導条件の詳細な検討を集中して行う。エストロジェンによるAvrRpt2-sGFP発現誘導後の細胞外分泌性防御応答誘導画分精製に関しては、未だ同活性が得られておらず、植物培養条件や発現誘導条件のさらに詳細な解析が必要である。また、PR-1およびSID2プロモーターレポーター形質転換植物体の病原体接種時の発現解析により、両遺伝子が非常に興味深い発現パターンを示すことが明らかとなったため、これらレポーター植物を用いて、AvrRpt2-sGFP発現誘導時の発現領域変化に加えて、実際に様々な病原体を接種した時のこれらマーカー遺伝子発現領域変化の挙動を詳細に解析したい。現在、AvrRpt2-sGFP誘導発現植物体と、プロモーターマーカー植物および各種防御応答シグナリング変異体を交配中である。熱ショックによるAvrRpt2-sGFPの一細胞発現系が確立できた後、AvrRpt2発現誘導によるHR伝播機構を詳細に観察し、上記プロモーターマーカーの発現挙動や、各種防御応答シグナリング変異の影響を解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は、本研究に必要な各種形質転換体の作出が予想以上に順調に進んだため、平成24年度に予定していた、それらの形質転換体の解析に必要な研究のうち20万円を前払い請求した。しかし、AvrRpt2-sGFPの熱ショック誘導条件検討に時間を要したことや、プロモーターマーカー植物体のデータが非常に興味深いもの出会ったため、その解析に時間を要したことから、最終的に当初の予定よりわずかに早く進んだ程度におわり、7万円ほどの研究費を平成24年度に繰り越すこととなった。しかし、上記のように本研究は順調に進んでおり、次年度に繰り越した研究費は平成24年度に引き続き行う形質転換体の解析、交配に必要な資金であり、平成24年度交付申請分と合わせて、本研究の遂行に必要なものである。よって、時間軸の多少の前後はあったが、当初の計画に沿って本研究費を使用させて頂く。
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Research Products
(3 results)