2011 Fiscal Year Research-status Report
ネムリユスリカの乾燥耐性メカニズムの特定と関連遺伝子の機能解析
Project/Area Number |
23780055
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
コルネット リシャー 独立行政法人農業生物資源研究所, 昆虫機能研究開発ユニット, 研究員 (20376586)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ネムリユスリカ / 乾燥耐性 / 酸化ストレス / マイクロアレイ解析 / RNAi / 培養細胞 |
Research Abstract |
ネムリユスリカ幼虫の極限的な乾燥耐性能力(アンヒドロビオシス)の分子メカニズムを解明するために、23年度は酸化ストレス応答を中心に研究進めてきた。 まず、パラコート処理によって、ネムリユスリカ幼虫とネムリユスリカ由来の培養細胞Pv210を酸化ストレスに暴露し、マイクロアレイ解析によって酸化ストレスに応答する遺伝子群を同定した。酸化ストレスに対して、幼虫個体と培養細胞は同様の応答を示した:主に発現が誘導される遺伝子は坑酸化因子のSODやチオレドキシン以外に、多くのLEAタンパク質、HSPs、輸送タンパク質やアミノ酸代謝に関連する遺伝子などだった。これらの遺伝子はアンヒドロビオシスの誘導中に発現するコアの遺伝子群と共通のものである。したがって、重要な乾燥耐性関連遺伝子群は酸化ストレスによって誘導されることを確認できた。 酸化ストレス感受メカニズムの中心にある遺伝子(Keap1, Cnc-C, Maf-S)をクローニングして、遺伝子発現パターンを調べた。特に転写因子のCnc-Cは測定された総合坑酸化能力の上昇パターンと相関のあるシャープな応答を示した。 遺伝子機能解析に関しては、RNAi実験を行った。以前、dsRNAはoff-target効果を示すことがあったので、今回はより特異性の高いsiRNAを使用した。蛍光ラベルしたsiRNAをトランスフェクション試薬と組み合わせて幼虫の体腔内に微量注入した結果、siRNAは各組織に入り、一周間ぐらい体内に残存していることを確認した。また、Pv210培養細胞にもsiRNAを導入したら、5日間以上細胞内に残存していることが確認した。それらのプロトコールで活性酸素のセンサーであるKeap1遺伝子のRNAi実験を行った。幼虫では期待通りの発現阻害を得ることができなかったので、現在ネムリユスリカ由来の培養細胞で実験を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画通りにネムリユスリカ幼虫とネムリユスリカ由来の培養細胞Pv210の酸化ストレスに応答する遺伝子群をマイクロアレイ解析により同定した。全体的な応答パターンは乾燥ストレス応答の遺伝子発現と似ており、コアな乾燥耐性関連遺伝子のほとんどが酸化ストレスにより誘導されることを確認した。活性酸素の感知・シグナル伝達に関わる遺伝子(Keap1, Cnc-C, Maf-S)の配列を決定し、定量的PCRによってCnc-Cの発現パターンと総合坑酸化能力の相関を確認した。機能解析に関しては幼虫と培養細胞を用いたRNAi実験のプロトコールを確立た。しかし、RNAiでKeap1の発現を阻害することができなかった。今後は条件を検討しながら、Cnc-Cと Maf-SなどのRNAiも行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後もネムリユスリカの酸化ストレス応答を中心に研究を進める予定である。活性酸素に暴露したネムリユスリカ幼虫と培養細胞のマイクロアレイ解析データをまとめつつ、活性酸素が多く発生する乾燥幼虫の蘇生過程においてもマイクロアレイ解析を行い、アンヒドロビオシスと酸化ストレスの共通な遺伝子群を特定する。遺伝子機能解析に関しては、RNAi実験を継続し、特にCnc-CとMaf-Sの発現を阻害して、坑酸化応答への影響を期待している。更に幼虫の乾燥過程と蘇生過程で活性酸素や坑酸化能力を詳しく調べる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費を予定通りに使う予定である。マイクロアレイや検出キット類などの消耗品費に加えて、国内外の学会で発表するための旅費も必要になる。
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