2012 Fiscal Year Annual Research Report
細胞膜リン脂質の品質管理に働くシステイン/シスチンのシャトルシステム
Project/Area Number |
23780081
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
大津 厳生 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (60395655)
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Keywords | 大腸菌 / システイン / 酸化ストレス / シスチン / トランスポーター / ペリプラズム |
Research Abstract |
大腸菌の内膜に局在するCysトランスポーターYdeDの遺伝子破壊株は過酸化水素(H2O2)に感受性を示し、過剰発現株は耐性を示す。また、CySSと結合するペリプラズム内タンパク質FliYの遺伝子破壊株もH2O2に感受性を示すことから、H2O2の還元に伴い生成するCySSがFliY依存的に細胞質内に取り込まれる可能性が示唆された。以上の結果から、Cys/CySSシャトルシステムが、カタラ―ゼが存在しないペリプラズム内で生じるH2O2の除去に重要な役割を果たすことが示され、遊離のシステインがペリプラズムで生じるH2O2を消去し、細胞を酸化ストレスから防御するユニークな機構を明らかにした。本研究課題では、1)ペリプラズムに生じたH2O2の検出、2)生じたH2O2によるリン脂質の酸化、3)リン脂質の酸化と細胞分裂障害との関連性を評価することを目的とした。 Hpx変異株(カタラーゼ、ペルオキシダーゼの機能欠損株)は、1μM程度のH2O2を細胞質に蓄積することがすでに報告にされている。H2O2は、細胞膜を自由に通り抜けることができるので、ペリプラズムにも1μM程度のH2O2が蓄積していると考えられる。このような条件下でH2O2特異的検出試薬(非細胞膜透過性BES)を用いることで、大腸菌のペリプラズムに生じているH2O2の検出を蛍光顕微鏡観察により行った。その結果、Hpx変異株と比較してH2O2消去に働くシステイントランスポーターYdeDを欠損させた変異株では、ペリプラズムにH2O2が有意に蓄積していた。 次に、過酸化脂質のバイオマーカーであるマロンジアルデヒドの量を測定したところ、ydeDfliY欠損株は野生株と比較して約1.5倍のMDA量が検出された。したがって、Cys/CySSシャトルシステムの生理的意義の一つとして、細胞膜の構成物質である脂質の酸化を未然に防ぐことが明らかにした。
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Research Products
(9 results)