2011 Fiscal Year Research-status Report
出芽酵母のエタノールストレス応答はエピジェネティクス制御を受けるか?
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23780092
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
藤村 朱喜 東京農業大学, 生物産業学部, 助教 (00453803)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | Saccharomyces cerevisiae / エピジェネティクス / エタノールストレス応答 |
Research Abstract |
出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeが持つアルコール発酵能力は古くから人々が利用し、醸造産業やバイオエタノールなどその需要は高まるばかりである。酵母はアルコール発酵の際、自らもエタノールストレスを受けるため、いかにエタノールストレスに耐えるかということが最も重要である。そこで本研究では酵母のエタノールストレスに対抗する仕組みについて明らかにすることを目的とした。また、S.cerevisiaeは単細胞真核生物であり、ヒトを含む真核細胞の生命現象を解明するためのモデル生物としての役割を果たしていることから、エタノールストレス適応機構の解明により真核生物に普遍に存在する環境応答機構を見出せると考え、エピジェネティクスによる遺伝子発現制御に着目した。エピジェネティクスとはDNAの変異を伴わない状態で遺伝する表現型の変化として定義され、クロマチンの構造が変化することがポイントとなる。このクロマチンに対し、ヒストン脱アセチル化酵素(HDACまたはSirtuin)やヒストンアセチル化酵素(HAT)が作用することでDNA発現調節を行っていると考えられている。エピジェネティクスによる制御は、酵母のエタノールストレス適応にも何らかの関わりを持つことが推測され、H23年度は以下の通り解析を進めた。 クロマチン構造の変化とエタノール応答の関係について明らかにするため、エタノールストレス存在下、非存在下でのヒストンアセチル化レベルの比較を行った。その結果、野性株においてエタノールストレス存在下ではヒストンのアセチル化レベルが上昇することが明らかになった。また、エタノール感受性を示したHAT関連欠損株のうち、エタノール存在下においてもアセチル化レベルの上昇が見られない株が存在した。これより、エタノールストレス応答にクロマチンの構造変換が関与する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の実験計画にあるクロマチンの構造変化とエタノールストレス応答との関連性について、種々のエピジェネティクス関連遺伝子欠損株でのアセチル化レベルの比較などから、複雑な制御系の存在が推測されそれらに関わる遺伝子を明らかにできる一端となったと考えている。広範な遺伝子が対象となるため、解析対象の精査に時間を要したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
エピジェネティクス関連遺伝子の欠損とエタノール感受性および耐性となる機構の関連性について、解析を進める。エタノールに対し、感受性および耐性が見られる欠損株を中心にエピジェネティクス制御のターゲットとなる可能性のある遺伝子群を推測する。クロマチンの構造変化について野生株、感受性株および耐性株での差異を比較検討し、エピジェネティクス制御と連動して起こるエタノールストレス関連遺伝子発現を精査する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、遺伝子欠損株解析において遺伝子改変、発現解析などのため多くの物品費が必要と考えている。また、成果発表のため国内外での報告を予定しており、旅費の支出等も予定している。
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