2012 Fiscal Year Annual Research Report
出芽酵母のエタノールストレス応答はエピジェネティクス制御を受けるか?
Project/Area Number |
23780092
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
藤村 朱喜 東京農業大学, 生物産業学部, 助教 (00453803)
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Keywords | Saccharomyces cerevisiae / 環境応答 / エタノールストレス / エピジェネティクス |
Research Abstract |
本研究では、出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeの持つエタノールストレス応答に着目し、近年重要性が明らかにされつつあるエピジェネティクス制御との関連を解析し、酵母の環境応答に関わる遺伝子発現制御機構の解明を目指した。 エピジェネティクスに重要なヒストンアセチル化レベルの制御には、ヒストンアセチル基転移酵素(HAT)とヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)が関わる。そこでHDAC阻害剤を用い、エタノールストレス応答に及ぼす影響を検討した。その結果、SAHAにより野生株の生育に抑制傾向が見られ、HDACの阻害は本応答に影響を与えることが示唆された。 次に、野生株、HAT関連遺伝子欠損株およびエタノール耐性傾向が見られたHDAC関連遺伝子欠損株Δsir3株とΔsir4株について本応答とヒストンアセチル化の関係を解析した。エタノール存在下での野生株のアセチル化レベルは顕著に上昇しており、一方で、HAT関連遺伝子欠損株Δada2株、Δhfi1株、Δngg1株においては、アセチル化レベルに大きな差異は見られなかった。以上より、エタノールストレス応答には、HAT関連遺伝子ADA2、HFI1、NGG1が重要であることが示唆された。また、Δsir3株、Δsir4株では野生株と比べて差異はやや小さいもののアセチル化レベルの上昇が見られた。両株は、エタノールに耐性傾向がみられるが、エタノール存在下では野生株よりもアセチル化レベルは低く、さらに、ノンストレス時では高い可能性が示された。 本研究では、エタノールストレス応答に関わるエピジェネティクス関連因子は多数存在することを見出した。また、それぞれの因子は、複合的に作用していることが推測され、さらにストレス適応と耐性ではその機構が異なる可能性が示され、ストレス応答に対してエピジェネティクス制御が深く関与していると考えられる。
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