2013 Fiscal Year Research-status Report
大腸菌トランス・トランスレーションの分子メカニズムの解明
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23780099
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
栗田 大輔 弘前大学, 農学生命科学部, 助教 (60552651)
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Keywords | tmRNA / リボソーム / タンパク合成 / 翻訳 / SmpB / トランス・トランスレーション |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、反応初期段階の分子メカニズムを目指し、in vitroトランス・トランスレーションの系を用いて解析を行った。トランス・トランスレーションは、tmRNA/SmpBによるRNA-タンパク質複合体が中心的な役割を担っている。tmRNA/SmpB複合体は、翻訳因子伸長因子EF-Tu/GTP複合体によってリボソームに運ばれる。 昨年度の結果より、ペプチド転移反応活性に影響を与えるSmpB変異体を同定した。この変異体はEF-TuによるGTP加水分解活性を有していることから、GTP加水分解からペプチド転移反応活性の間で活性を失っていると推測された。今年度はその結果を受けて、GTP加水分解後のリボソーム結合活性について1分子蛍光分析による解析を行った。まずSmpBに部位特異的に蛍光ラベルを行い、蛍光偏光解析によりtmRNA結合活性を測定した。変異体の解離定数は2.1nM程度であり、tmRNA結合活性を有していることを確認した。次に翻訳停滞リボソームをin vitroで形成させ、tmRNA/SmpB/EF-Tu/GTPと反応させリボソーム結合活性を測定した。それによると変異型SmpBは野生型と比べ、リボソーム結合能が大きく低下していることを確認した。SmpBの一部についてペプチドを合成し、変異を持つペプチドとリボソーム結合能を比較したところ同様の結果を得ている。これらの結果は、この変異はGTP加水分解後のリボソーム結合活性に重要であることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、SmpB変異体の1分子蛍光分析によるリボソーム結合活性測定の系を立ち上げを行った。これにより変異体の解離定数を測定することが可能になった。これまでの結果を論文としてまとめてるべく、現在執筆中である。 1分子蛍光分析系の立ち上げに予想以上に時間がかかり、当初予定していた反応中間体の解析を十分に行うことはできなかった。中間体形成には2つの方法を考えており、抗生物質あるいはGTP非加水分解アナログを用いて解析を行う予定であった。前者の抗生物質については、今後行っていく予定である。後者のGTP非加水分解アナログについて、まずAla-tmRNA/SmpB/EF-Tu/GDPNPの4者複合体の形成の条件検討を行った。複合体評価はアミノアシルtmRNAのデアシレーションを測定することで間接的に行った。しかし、複合体の形成を確認することはできなかった。翻訳伸長因子EF-Tsを反応系に加えて再度条件検討を行ったが、結果は同様であった。 総合して、変異体を用いた機能解析については進展が見られたが、反応中間体の生化学的解析は条件検討の段階であり、今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、トランス・トランスレーション中間体の解析を行っていく。特に抗生物質やGTP非加水分解アナログ等を使用して反応中間体を形成し、in vitroで解析していく。今年度立ち上げた1分子蛍光分析法に加え、ペプチド転移反応活性やGTP加水分解活性を通して反応中間体の評価を行う。この複合体に対して部位特異的ラジカルプロービングや部位特異的クロスリンクによって反応中間体におけるRNA-タンパク、あるいはタンパク-タンパク間の相互作用を調べていく予定である。部位特異的クロスリンク法によって得られた標的のタンパク質は、ウェスタンブロッティングおよび質量分析によって特定を行う予定である。
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Research Products
(5 results)