2011 Fiscal Year Research-status Report
植物の蛋白質ジスルフィド結合形成ネットワークの解明
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23780101
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
恩田 弥生 山形大学, 農学部, 助教 (70368463)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 植物 / 酵素 / 蛋白質 |
Research Abstract |
ジスルフィド結合形成は蛋白質の酸化的フォールディングの鍵を握る反応であり、細胞は多様なジスルフィド結合形成システムを進化させてきた。PDI(プロテインジスルフィドイソメラーゼ)はスルフヒドリル酸化還元酵素であり、基質分子への蛋白質ジスルフィド結合の導入、還元、異性化を直接触媒する。高等植物は約20のPDIファミリーメンバーを有し、中でもPDIL1;1(チオレドキシンドメイン構造a-b-b-a)とPDIL2;3(チオレドキシンドメイン構造a-a-b)は貯蔵蛋白質のジスルフィド結合形成において重要かつ異なる役割を担うことを見出した。本研究では植物細胞における蛋白質ジスルフィド結合形成のネットワークを解明することを目的とする。平成23年度はPDI分子種の酸化力獲得の分子機構を明らかにすることを目的として、小胞体膜蛋白質ERO1に着目し、PDIL1;1及びPDIL2;3を含む複数のPDI分子種との分子間相互作用能を調べた。ERO1と各PDI分子種について大腸菌組換え蛋白質発現系を構築し、精製標品を得た。ERO1のPDI分子認識能を比較解析した結果、ERO1はPDI分子種に対し異なる相互作用を示すことが示唆された。PDIの基質特異性に加え、PDIとPDIを電子供与体とするスルフヒドリル酸化還元酵素の特異的な組み合わせが小胞体における分子内・分子間ジスルフィド結合形成ネットワークの要として働く可能性を見出し、本研究成果は貯蔵オルガネラ発達の制御機構の解明に大きく貢献する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請者は平成23年度研究実施計画通り、小胞体膜蛋白質ERO1と複数のPDI分子種(野生型及び改変型)の大腸菌組換え蛋白質発現系を構築し、ERO1-PDI分子間相互作用をin vitroアッセイ系により解析した。更に、新規スルフヒドリル酸化還元酵素の同定を行った。平成23年度において当初研究計画よりも進展があったため、平成24年度に計画していた新規スルフヒドリル酸化還元酵素のRNAi形質転換植物の作製を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の目的は植物細胞における蛋白質ジスルフィド結合形成のネットワークを生化学的・分子生物学的アプローチにより解明することである。平成23年度の研究成果に基づき、今後は研究実施計画通り、植物細胞におけるスルフヒドリル酸化還元酵素群の機能を明らかにする。平成24年度及び平成25年度は次の解析を進める。(1)植物細胞におけるスルフヒドリル酸化還元酵素群の機能解析―スルフヒドリル酸化還元酵素群(PDIを含む)の酵素反応特性を解析し、in vitro機能評価を行う。この際、平成24年度導入の分光光度計を使用する。更に、新規スルフヒドリル酸化還元酵素の発現を抑制したノックダウン植物系統を作製、選抜し、貯蔵蛋白質の組成・蓄積やオルガネラの発達・機能への影響を解析する。(2)植物細胞における新規スルフヒドリル酸化還元酵素の局在とPDI分子種認識能の解析―新規スルフヒドリル酸化還元酵素のGFP融合蛋白質をオルガネラマーカー蛋白質と共発現する形質転換植物系統を作製、選抜し、新規スルフヒドリル酸化還元酵素の細胞内局在部位を調べる。更に、平成23年度のin vitro実験結果に基づき、植物細胞におけるERO1及び新規スルフヒドリル酸化還元酵素群のPDI分子種認識能をin vivoアッセイ系により解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の研究成果に基づき、スルフヒドリル酸化還元酵素群(PDIを含む)の酵素反応特性を解析し、in vitro機能評価を行う必要が生じた。平成24年度は分光光度計(SHIMADZU、UV-1800)及びマイクロセル、マイクロセルフォルダーを導入し、研究計画の遂行を効率化する。
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