2012 Fiscal Year Annual Research Report
バクテリアにおける翻訳途中脱離ペプチジルtRNAの産生メカニズムの解明
Project/Area Number |
23780102
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長尾 翌手可 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30588017)
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Keywords | 翻訳精度維持機構 / tRNA / リボソーム |
Research Abstract |
平成24年度では、前年度に観察された大腸菌遺伝子にコードされていないペプチド配列をもつ翻訳途中脱離pep-tRNA(noncognate pep-tRNA)について解析を行った。その結果、複数のnoncognate pep-tRNAが同一のmRNAから産生されており、そのmRNAの5番目のコドンがAAAのリジンとなっていた。PTHが失活するとリジンのアミノアシルtRNAが枯渇するためこのAAAコドンがハングリーコドンとなりnoncognate なアミノアシルtRNAが空のAサイトにエントリーし脱離していると考えられる。次に、4番目のコドンをAAAとしたレポーター遺伝子をPTHTs細胞で発現させ、レポーター由来のtetra、penta pep-tRNAを観察したところ、tetra pep-tRNAについてはcognateなpep-tRNAの他にnoncognate pep-tRNAが有意に検出されたが、それは翻訳の次のステップに持ち越されないことが分かった。従って、誤って産生されたpep-tRNAは積極的にリボソームから脱落させられるといった精度維持機構があることが示唆された。本研究期間、LC/MSを用いた細胞内pep-tRNA解析法の確立に成功し、従来法よりも簡便かつハイスループットなpep-tRNA解析を実現した。また、この解析方法とRNA単離技術を駆使した結果、細胞内でnoncognateなpep-tRNAが産生していることが判明し、そのメカニズムからペプチジル転移反応以降に全く新しい翻訳精度維持機構がある可能性を示唆することができた。また、並行してdrop off亢進rRNA変異を網羅的に解析したところ、新生ペプチド鎖が通るリボソームトンネルの変異体において亢進が見られたことから、新生ペプチド鎖とリボソームトンネルの相互作用を示唆すると考えられる。
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