2011 Fiscal Year Research-status Report
新奇トランスポーターを介したニコチン生合成中間体の細胞内輸送と生理機能の解明
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23780109
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Research Institution | Kobe Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
士反 伸和 神戸薬科大学, 薬学部, 助教 (20547880)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | タバコ / ニコチン / トランスポーター / 二次代謝 |
Research Abstract |
植物は20万種類を超える極めて多様な二次代謝産物を生産する。医薬品原料などの有用性から生合成酵素や培養細胞に関する研究が進められ、生合成酵素の過剰発現植物などが作出されてきたが、植物での大量生産に至った例は少ない。これまでの研究から、二次代謝産物は最終産物のみならず生合成中間体までもが器官間、組織間、細胞内オルガネラ間をダイナミックに移動することが明らかとなってきた。そのため生合成酵素だけでなく、代謝産物の空間的な動態をも制御することが植物を用いた有用物質生産には必要であるが、その輸送機構はほとんどわかっていない。本研究では、タバコおよびニコチンアルカロイドをモデルとして、申請者が近年トランスクリプトーム解析から見出したプラスチド局在の新奇トランスポーターT408をターゲットに、トランスポーターを介した生合成中間体の細胞内輸送を解明し、植物を用いた有用物質生産への基盤構築に資することを目的としている。本年度は、T408の発現用ベクター(過剰発現、GFP融合タンパク発現、発現抑制)の構築を終了した。さらにアグロバクテリウム法を用いてこれらをタバコ植物に形質転換した。過剰発現や発現抑制の確認にはT408抗体を、GFP融合タンパク質の発現確認にはGFP抗体を用いて、それぞれ形質転換体の確認を行った。その結果、それぞれについて数個体の形質転換体を得た。また、シロイヌナズナのT408相同遺伝子のKOラインについて、通常条件下での生育を検討するとともに、過剰発現用の形質転換体の作出に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
形質転換体の作出については順調に進んでいる。一方で、形質転換体の解析において実験系の確立がまだできておらず、その条件検討のために時間がかかったため、若干の遅れとなっている。ただし、形質転換体の確認に割いていた時間をこれから解析系の確立と解析に回すことで、この遅れはカバーできると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1.形質転換体の作出:形質転換体の数が少ないため、さらに形質転換を行いライン数を増やす。2.代謝産物の変動解析:得られた形質転換体および野生株について、ポット内での生育を揃えた上で、葉及び根より代謝産物を抽出する。OrbitrapによりNADならびにニコチンなど一次代謝や二次代謝産物の生産量の変化を解析し、T408の生体内における役割を推定する。同様の解析を、BY2培養細胞での形質転換体を用いても行う。3.輸送基質の同定:昆虫細胞Sf9で高発現させ、プロテオリポソーム系により輸送基質を同定する。検討する基質としては、上記2.で候補として挙げられる化合物を行う。4.シロイヌナズナの相同遺伝子の解析:すでに作出した過剰発現体などを用い、その生育や代謝産物の変動、また光合成能などを、北海道大学 高林助教との共同研究として進める。それら解析から、本トランスポーターの輸送基質や生理的役割を解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記研究を遂行するために必要となる研究試薬や器具を購入する。また、他研究者との情報交換や発表を目的に旅費に使用する。研究を論文として世に出すため、英文校閲などの代金にも使用する。
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