2011 Fiscal Year Research-status Report
プローブ分子の創製を基盤とするユビキノンの細胞内動態の解明
Project/Area Number |
23780116
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村井 正俊 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (80543925)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ユビキノン / 光親和性標識 / Click Chemistry / 出芽酵母 / ミトコンドリア |
Research Abstract |
ユビキノンの主な役割は、呼吸鎖電子伝達系の基質としてはたらくことである。一方、酸化還元能を有するユビキノンを"活性因子"として利用することで一定の生理活性を発揮する未同定のタンパク質の存在や、ユビキノンの細胞内輸送を担うタンパク質の生理的重要性が示唆されるに至り、電子伝達系以外での役割が注目されている。ユビキノンに対して特異的な親和性を示すこのようなタンパク質(以後、キノン結合性タンパク質と呼ぶ)の機能の全貌を明らかにするためには、まずそれらを同定することが必須となる。そこで本研究では、独自に創製するユビキノンプローブ分子を用いた光親和性標識法に基づき、出芽酵母(S. cerevisiae)由来のタンパク質群からキノン結合性タンパク質を網羅的に単離・同定し、機能解明に繋げることを目的とした。実施した研究の概要は以下の通りである。1)ユビキノンプローブ分子のデザイン合成. ユビキノンプローブのデザインにあたっては、ビオチンや蛍光団等の嵩高い検出基の導入による生理活性の低下を避けることが重要である。そこで、"Click chemistry"により任意の検出基を光親和性標識後に導入することを念頭に、ユビキノンの分子末端であるイソプレン構造の末端部に三重結合を導入した光反応性ユビキノンプローブの合成を行った。2) 酵母タンパク質群からのユビキノン結合性タンパク質の探索. 合成したユビキノンプローブは酵母ミトコンドリアの良好な電子伝達基質なることを、各種アッセイ系により明らかにした。出芽酵母ミトコンドリアおよびミクロソーム画分を光親和性標識実験に供したところ、特異的に標識を受ける複数のタンパク質を検出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はユビキノンの反応中心に光反応性基を導入した二種類のプローブ分子を合成し、本化合物が酵母ミトコンドリアの基質となることを確認した。さらに、「ユビキノン結合性タンパク質」の候補となる複数のタンパク質を検出し、これらのタンパク質の同定を進めたところ、呼吸鎖酵素の成分として既に知られているタンパク質に加え、Voltage dependent -anion channel (VDAC)など、ミトコンドリアの活性制御に関与する複数の膜タンパク質を同定した。こうしたプレリミナリーな実験結果からも、進捗状況は概ね順調であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は以下の二点を中心に研究を展開する予定である。1. ユビキノンプローブの構造最適化とタンパク質解析法の改良. 現在用いているユビキノンプローブはユビキノンの酸化還元中心に光反応基(アジド基)を導入した化合物である。上記に記したユビキノン結合性タンパク質の"網羅的"な探索を念頭に置いた場合、当然ながら天然のキノン環構造を維持したプローブ分子の合成も達成されなくてはならない。 現在のところ、タンパク質の同定は二次元電気泳動とMALDI-TOF MS解析(PMF)により進めているが、この方法ではユビキノンの標的として予想される、膜結合性あるいは膜貫通性のタンパク質の一部を取り逃がしている可能性が高い。24年度は、アビジンカラムやLC-MS/MSを用いた解析と組み合わせることで、同定出来るタンパク質のバリエーションを増やしたいと考えている。以上のように、化合物と解析方法の両面からスクリーニングの精度を向上させたい。2. ユビキノン結合性タンパク質の機能解析. ユビキノン結合性タンパク質として、現在注目されているのがCOQ10と呼ばれるタンパク質である。出芽酵母を用いた研究から、本タンパク質が欠損した場合ミトコンドリアの電子伝達活性が著しく低下することから、COQ10はミトコンドリア内のユビキノンのキャリアー(担体)として機能している可能性が示唆されている。これは、従来「細胞膜上を自由に移動する」と考えられていたユビキノンの概念を覆す報告である。そこで、酵母COQ10に注目して、(1)酵母タンパク質からのCOQ10の検出、(2)COQ10におけるユビキノン結合部位の解析と結合親和性の評価、(3)さらに呼吸鎖酵素との相互作用の解析の3点について解析を進めたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度はプローブ分子の有機合成に多くの時間を費やしたため、研究に占める生化学解析実験の割合が予定より少なく、計上した消耗品費の一部を24年度に繰り越している。平成24年度は消耗品費のおよそ7割を生化学実験に充てる予定である。具体的には、各種性化学試薬、タンパク質解析用のHPLCカラムの購入費用、あるいは質量分析装置の消耗品(ターゲットプレート、キャピラリーカラム、脱塩用チップ等)を計画している。
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[Journal Article] Reaction mechanism of single subunit NADH-ubiquinone oxidoreductase (Ndi1) from Saccharomyces cerevisiae: evidence for a ternary complex mechanism2011
Author(s)
Yang Y, Yamashita T, Nakamaru-Ogiso E, Hashimoto T, Murai M, Igarashi J, Miyoshi H, Mori N, Matsuno-Yagi A, Yagi T, Kosaka H
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Journal Title
The Journal of Biological Chemistry
Volume: 286
Pages: 9287-9297
Peer Reviewed
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