2012 Fiscal Year Research-status Report
チューリップ耐病性二次代謝産物の活性化に関わる新規酵素系の解明
Project/Area Number |
23780120
|
Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
野村 泰治 富山県立大学, 工学部, 助教 (40570924)
|
Keywords | チューリップ / チューリッポシド / チューリッパリン / チューリッポシド変換酵素 / カルボキシルエステラーゼ / 二次代謝 / 生合成 / 酵素 |
Research Abstract |
チューリップにおける主要二次代謝産物であるチューリッポシド(Pos)A、Bは、チューリップ組織内のPosA変換酵素(TCEA)およびPosB変換酵素(TCEB)によってアグリコンのラクトン化体である抗菌活性物質チューリッパリン(Pa)A、Bへとそれぞれ変換される。これまでに、チューリップ花弁からTCEAをコードする遺伝子TgTCEA1を単離・同定し、本酵素が分子内エステル転移によるラクトン形成反応を触媒する新しいタイプのカルボキシルエステラーゼであることを明らかにしているが、TgTCEA1遺伝子は球根においては全く発現がみられなかったことに加え、以前に球根と花弁から精製されたTCEAの性状が異なっていたことから、球根特異的なTCEAアイソザイム遺伝子の存在が強く示唆された。そこで今年度は、球根からの同遺伝子のクローニングおよびその機能解析を行い、チューリップにおけるTCEAの分子多様性を明らかにすることを目的とした。 球根から精製されたTCEAの部分アミノ酸配列に基づいたdegenerate RT-PCRおよびRACE-PCRを経て、花弁由来TgTCEA1の一次配列と約77%の相同性を示す新規遺伝子TgTCEA-b1 cDNAを球根から単離した。大腸菌で発現させた組換え酵素はPosからPaへの定量的変換反応を触媒し、PosBよりもPosAに対して約20倍高い反応効率を示したことから、TgTCEA-b1遺伝子がTCEAをコードしていることが確認された。遺伝子発現解析の結果、球根ではTgTCEA-b1のみが発現しており、それ以外の組織ではTgTCEA1が優先的に発現していることが分かった。すなわち、チューリップでは組織によってTCEAアイソザイムの使い分けがなされていることが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究においては、チューリッポシド類をチューリッパリン類へと変換する酵素系の解明を目指している。これまでの研究によって、チューリッポシドA変換酵素には組織特異的に発現する複数のアイソザイムが存在することを明らかにし、いずれのアイソザイムについても酵素学的諸性質、発現様式、細胞内局在等を明らかにすることができている。目的とする酵素系の全容解明に向けて、生化学および分子生物学的観点からの新しい知見が着実に得られており、概ね順調に進展していると判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでチューリッポシドA変換酵素の同定および機能解析を主としていたが、次年度はチューリッポシドB変換酵素の同定と機能解析を中心に研究を進めていく。同酵素については既に酵素精製を達成しており、酵素遺伝子の単離、組換え酵素発現系の構築、酵素学的諸性質の解明、発現様式の解明、細胞内局在性の解明に取り組んでいく。また、既に同定しているチューリッポシドA変換酵素については、結晶化実験を進め、結晶構造解析を行う予定である。これによって、分子内エステル転移によるラクトン形成反応を触媒する新規カルボキシルエステラーゼとして同定された本酵素の触媒機構を解明する。さらに、これまでに未同定のチューリッポシド生合成遺伝子の同定に向けて、次世代シーケンサーによるトランスクリプトーム解析も状況によっては行っていきたいと考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
酵素精製用カラム担体をはじめとした生化学関連試薬、遺伝子解析に使用する分子生物学関連試薬、ならびにHPLC分析に用いるカラム等が必要であり、これらは物品費から支出する。ポリクローナル抗体作製の外注費用や論文投稿・別刷り料はその他費用から支出する。旅費は国内および海外での学会参加の際に使用する。次年度に使用する研究費が生じた点については、本研究課題最終年度である次年度に、次世代シーケンサーによるトランスクリプトーム解析を行う可能性があり、同解析費は1件あたり100万円以上の高額となることが想定されたため、23年度および24年度の支出を抑制したという経緯がある。次年度に本解析を行う際には、その他費用からの支出とする。
|
Research Products
(14 results)