2011 Fiscal Year Research-status Report
植物二次代謝産物クマリン類縁体の関与する生体防御機構
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23780122
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
清水 文一 東洋大学, 生命科学部, 准教授 (50324695)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | クマリン化合物 / 生合成遺伝子 / 基質特異性 |
Research Abstract |
本年度においては、サツマイモ(Ipomoea batatas cv. Kokei No.14)およびサツマイモのモデル植物としてソライロアサガオ(I. tricolor cv. Heavenly Blue)からのクマリン化合物生合成鍵酵素遺伝子のクローニングを進めた。サツマイモからは4種類、ソライロアサガオから2種類のアミノ酸配列の異なるクローンを取得した。さらにこれらのクローンを大腸菌にて発現し酵素活性を比較したところ、基質特異性の異なる2つのグループを取得できたことがわかった。すなわち、フェルロイルCoAのみを基質としてスコポレチン生合成に関与するものと、フェルロイルCoAだけでなくp-クマロイルCoAも基質とし、スコポレチンに加えてウンベリフェロンも与えるクローンの2種類である。植物界にはスコポレチンやウンベリフェロンに加えて、さまざまな構造を持つクマリン化合物が存在し、それぞれ化学的な反応性が異なる。クマリン化合物がもつ抗酸化活性、抗菌活性も構造の違いによって異なると考えられる。これらの酵素遺伝子配列を利用することで、組換え植物体内でスコポレチン、ウンベリフェロンの内生量をそれぞれ独立に制御できると考えられる。 また、AtF6'H1関連の組換え体を作成のためのプラスミドベクターを構築した(欠損株に関しては取得済みである)。具体的には35Sプロモーターの下流にAtF6'H1をつけたもの、AtF6'H1プロモータ配列下流にGUS/GFP配列をつないだものである。 さらに、サクラ植物体の周辺の土壌からサクラ葉に含まれるクマリン分解活性をもつ微生物の単離をすすめ、クマリンを資化する微生物の単離に成功した。微生物によるクマリン分解メカニズム、さらにはその分解中間体の構造解析をすすめることで根圏におけるクマリン代謝およびクマリンの生理機能の解明の一助となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本来ならば最終年度に行う予定であった、クマリン代謝物の探索を初年度に前倒しで行った。それと並行して組換え植物体作成の準備を進めた。後者の進捗状況はやや遅れが見られるが、後の年度で行う予定であった前者の代謝物追跡を始めたことから、研究全体としてはおおむね遅れはない。さらには、ソライロアサガオから同鍵酵素遺伝子ホモログをクローニングできたことから、生合成酵素の基質特異性などに関して、バリエーションを増やすことがこの一年でできるようになった点は当初の目的に向かってより精度の高い実験が可能になったと考える。すなわち、さまざまな基質特異性を有する鍵酵素を導入して、植物体内に蓄積するクマリン化合物の構造を制御できる。以上の点から、おおむね順調に進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
シロイヌナズナの過剰発現体の作出を進め、作出した植物体および欠損株における微生物に対する抵抗性の変化についてのアッセイ系の確立を重点的にすすめる。また、本年度は植物と相互作用する微生物によるクマリン化合物の代謝についても追跡する予定である。 サツマイモの欠損株作出にやや時間がかかっているため、モデル植物で比較的サツマイモよりも扱いやすいソライロアサガオの組換え体についてもすすめる。ソライロアサガオを用いる利点は、サツマイモが六倍体植物であるのに対してソライロアサガオは二倍体である点である。ソライロアサガオゲノム中には、比較的、標的遺伝子のホモログ数が少ないことが本年度の研究で分かってきた。ソライロアサガオの病害抵抗性獲得現象については、研究責任者がこれまでにもっているアッセイ系にて進めることができる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度の繰り越し分は予定していた試薬をより低価格で購入するなどして生じた。これを次年度分に組み込んで使用する。次年度の研究費は申請時に計画したものとほぼ同じ目的で使用する予定である。すなわち、消耗品が主たる使用目的項目である。組換え体作出などの実験に使用する器具および試薬の購入に使用する予定である。また当該年度に開催される国内外の学会に参加する旅費としても使用する予定である。前年度からの繰り越し分は計画に即して行う実験に使用するプラスミド購入資金(分子生物学用試薬)として当てる。
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Research Products
(2 results)