2012 Fiscal Year Research-status Report
植物二次代謝産物クマリン類縁体の関与する生体防御機構
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23780122
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
清水 文一 東洋大学, 生命科学部, 准教授 (50324695)
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Keywords | クマリン / 二次代謝産物 / 代謝分解物 / 生合成酵素 |
Research Abstract |
本年度はオルト位水酸化酵素発現部位の可視化を目指した、GFPもしくはGUSタグでラベルしたシロイヌナズナ植物体の作成およびクマリンを始めとするクマリン化合物の分解代謝についての追跡を行った。その結果、植物体の生育する環境から、クマリン分解菌の単離同定に成功した。結果、本菌はPseudomonas taiwanensisと同定した。本菌によるクマリン代謝を追跡したところ、クマリン添加培養液中では培養時間とともに、クマリン含量が減少するとともに、オレフィン結合が還元された3,4-dihydrocoumarinおよびmelilotic acid (2-hydroxycinnamic acid)が増加した。48時間培養後にはこれらの成分が減少し、72時間後には検出されなくなった。加えて、本菌はクマリンだけでなく、スコポレチン、ウンベリフェロンといったクマリン化合物を資化する能力を有していたが、その代謝能は基質の構造によって変化した。 さらに、オルト位水酸化酵素の基質認識部位についても点変位もしくはドメインスワップにより探索を行い、桂皮酸類CoAチオエステルの桂皮酸芳香環部分の認識に関わる領域の特定を進め、抗菌性や代謝感受性の異なるクマリン化合物の生合成についても調べた。具体的にはサツマイモで得られた二つの基質特異性の異なる酵素のドメインもしくはアミノ酸を入れ替えた組換え酵素の酵素活性を測ることで進めた。その結果、本酵素のC末端の40残基程度の領域に基質認識に非常に重要な機能が存在していることを特定した。 また、組換え植物体作成を目指したソライロアサガオおよびサツマイモの培養細胞の作成を進め、組換え体をつくるためのカルス培養から個体再生する条件までを検討した。またこれらの植物に形質転換するためのそれぞれの植物のもつオルト位水酸化酵素の同定に関しては完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
オルト位水酸化酵素の可視化に向けたGFPもしくはGUSタグを用いた組換えシロイヌナズナ植物体作成およびソライロアサガオ、サツマイモ培養細胞の立ち上げに関しての遅れがある。これは、分解代謝微生物の単離同定およびその代謝追跡に時間を費やしたこと、および代謝能に対応した生合成酵素の基質特異性についての実験に時間を取ったためである。 しかしその一方で、クマリン代謝については非常に進展が見られた。すなわち分解菌の同定および代謝経路の同定である。これらの代謝中間体のもつ抗菌活性等、現在検討中である。また、同定した微生物は昆虫と植物の関係を考えてゆく上で興味深い代謝能をしめしており、植物二次代謝産物の機能を考える上で注目に値する。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年は遅れを取り戻すため、オルト位水酸化酵素の可視化に向けたタグ付き組換え植物の作成および生合成酵素の過剰発現、発現抑制組換え植物作成におもに注力する。具体的には比較的簡単に個体再生のできるソライロアサガオから過剰発現体等を作成し、これにフザリウムなどの糸状菌を感染させる実験等を推進する。 また、微生物によるクマリンを始めとする二次代謝産物の分解菌の探索をさらに行い、植物を取り巻く環境中におけるクマリンの動態を追跡し、クマリンの生理学機能の解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
組換え植物体作成のための各種試薬、および培養植物細胞作成のための試薬および器具類に主に支出する。また、組換えに用いるプラスミド等の作成のためにつかう分子生物学・生化学試薬も支出する。 一般的な試薬類で実験可能な、クマリン分解菌の単離も同時に進め、かつその代謝の追跡のためのクロマトグラフ試薬および溶媒を購入する。
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