2011 Fiscal Year Research-status Report
人の健康を守るプロアントシアニジンの真の機能を明らかにする化学生物学研究
Project/Area Number |
23780123
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Research Institution | Osaka Electro-Communication University |
Principal Investigator |
齊藤 安貴子 大阪電気通信大学, 工学部, 講師 (40415162)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | proanthocyanidin / polyphenol / bioprobe / regioselective synthesis |
Research Abstract |
プロアントシアニジン(PA)は、様々な食品に含まれ健康に良いといわれながら、化合物の構造が複雑で純粋な単離が難しい事から、混合物による評価によって機能を論じられている化合物である。本研究課題では、純粋なプロアントシアニジン化合物を申請者自ら開発してきた合成方法を用いて合成し、生体物質の相互作用を化学生物学的な手法(化合物のプローブ化、アフィニティービーズ法)で直接解析して明らかにし、それを元に食の安全・人の健康を守る新たな化合物を開発することを目指し研究を行った。 PAの機能を解明するために、有機合成化学を軸足にした「化学生物学」の技術を用いる。まず、申請者が得意とする有機合成によりPAを蛍光色素などでプローブ化し、多くの蛋白質が存在する条件下でPAの挙動・機能を可視化する。また、PAを固相に固定化したビーズを作成して細胞の破砕液から結合蛋白質を釣り上げ、どのような機能を持つ蛋白質が結合するかを同定し、これまでの生物活性試験の結果と比較検討を行う。 上記プローブ化を進めるため、新規PA合成法の開発を進め、合成ユニットの保護基を変えることで、さらに効率よい合成が可能であることを明らかとした。また、その合成過程で、プローブ化するために非常に重要な、リンカー導入位置作り出すことに成功した。リンカー導入には、生物活性に影響しない位置の変換が必須であるが、PAのように、類似の水酸基が多く存在する化合物では非常に難しいと考えられる。保護基の工夫と縮合の試薬の選択によって、生物活性に関与しない部分の水酸基の脱保護が進行したことを各種機器分析により確認した。これにより、プローブ化の創成がさらに加速されると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の部分でもふれたが、新規PA合成法の開発を進め、合成ユニットの保護基を変えることで、さらに効率よい合成が可能であることを明らかにすることができた。また、その合成過程で、プローブ化するために非常に重要な、リンカー導入位置作り出すことに成功した。リンカー導入には、生物活性に影響しない位置の変換が必須であるが、PAのように、類似の水酸基が多く存在する化合物では非常に難しいと考えられる。保護基の工夫と縮合の試薬の選択によって、生物活性に関与しない部分の水酸基の脱保護が進行したことを各種機器分析により確認した。これにより、ビーズへのPA導入研究、および、PAへの結合タンパク質同定実験に実際に進むことが可能である。本研究課題は、PAのプローブ化と、それを用いた結合タンパク質の同定、および、生物活性と小分子ータンパク質相互作用との相関関係を見出すことにある。この研究で最も重要な部分、プローブ化するための基礎研究が、一年目でほぼ終了したことになり、2年目はほぼ予定通り、生体物質・タンパク質を用いた化学生物学研究を中心に研究を進めることが可能である。ゆえに、本研究課題はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの達成度」で述べたように、プロアントシアニジンをプローブ化するための手法の開発は順調に進行している。今後は、実際のプローブ化、その分子プローブを用いた化学生物学実験をおもに行う。実際には、まず第一に、カテキン、エピカテキン、エピガロカテキンガレートを用いたプロアントシアニジン分子プローブの合成をおこなう。現時点での問題は、プローブ化のためにリンカーを導入した化合物の脱保護が効率的にできるかどうかであるが、現在確認を急いでいる。また、脱保護を行った後の分子プローブの精製はHPLC分取法により行うが、その準備はほぼ整ったため、十分可能だと考えられる。精製終了後、それらを用いた化学生物学実験を行う。まず確認するのは、プロアントシアニジンが阻害活性を持つDNAポリメラーゼに対する相互作用の予定である。DNAポリメラーゼに関して、αには強い阻害活性を持つが、ベータにはほとんど阻害活性を持たないことが我々の研究でわかっている。そこで、DNAポリメラーゼαとベータに対する物理的結合を検出することで、分子プローブの化合物としても評価を行うことができ、同時に阻害活性発現機構の解明も可能だと考えている。このように、合成研究と、化学生物学研究を同時に進め、最終的には本研究課題を投稿論文としてまとめる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度の研究費は、主に試薬等の消耗品に使用される。大きな機器に関しては、前年度に導入が完了し、今後はプロアントシアニジン分子プローブの合成と、化学生物学研究を進めるためである。合成研究に関しては、反応試薬類、反応溶媒類、精製するための溶媒(HPLC用溶媒含む)が主な使用品目となる。また、化学生物学研究に関しては、タンパク質発現のための試薬類、検出用試薬類、汎用消耗品類が主な品目となる。
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