2011 Fiscal Year Research-status Report
消化管内分泌細胞に発現する新たな食品たんぱく質/ペプチド受容体候補の網羅的探索
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23780124
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
比良 徹 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (10396301)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 食品たんぱく質 / コレシストキン |
Research Abstract |
消化管内分泌細胞に発現する食品たんぱく質/ペプチド受容体候補を探索するため、マウス小腸由来の消化管内分泌細胞株STC-1とマウス大腸由来の消化管内分泌細胞株GLUTagのmRNA発現を比較したところ、STC-1細胞においてTRPチャネル型受容体の一つであるTRPA1の発現が高いという結果が得られた。また、STC-1細胞をα-カゼインを含む培地で培養すると、TRPA1遺伝子の発現が高まったことより、このものが、α-カゼインの認識に関することが考えられた。 代表的な食品たんぱく質である牛乳カゼインの主要なサブユニットであるα-カゼインのCCK分泌作用について上記のSTC-1細胞を用いて解析した。カゼインに含まれる他のサブユニット(β-カゼイン、κ-カゼイン)との比較において、α-カゼインは高いCCK分泌促進作用を有していた。また、カゼインの加水分解物と比較したところ、α-カゼインは大幅に低い濃度でCCK分泌を促進した。これらの結果より、インタクトなα-カゼインが高いCCK分泌活性を持つことが明らかとなった。 CCK分泌促進作用を有する大豆たんぱく質加水分解物において、活性成分を単離するために、液体クロマトグラフィー(FPLC)を用いて分子量に基づく分画を行った。その結果、特定の画分への活性の集約は見られず、活性が分散したことより、CCK産生細胞は混在する遊離アミノ酸や、特定の分子量のペプチドだけを認識するのではないことが示された。多様なペプチドの構造を広く認識する機構の存在が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的は、消化管内分泌細胞において食品たんぱく質や食品ペプチドの受容体を見いだすことであり、遺伝子発現解析により、CCK産生細胞での食品たんぱく質受容体候補の一つとして、細胞膜に発現するTRPA1分子を挙げることができた点では、おおむね順調と考える。しかし、この分子が実際に食品たんぱく質を受容する上で機能するかどうかについてはさらなる試験が必要と考える。また、乳タンパクカゼインの主要サブユニットであるα-カゼインが、他のサブユニットや、加水分解物に比べて、強いCCK分泌促進作用を持つことを見いだした点は、当初の計画以上の新たな知見である。これにより、α-カゼインの特性を基に、活性に寄与する構造や、その受容体の特定につながることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
α-カゼインの強いCCK分泌作用に関して、その細胞内情報伝達経路を解析することで、受容機構の解明を目指す。また前年度見いだされた受容体候補について、消化管内分泌細胞においてsiRNAによるノックダウン、特異的阻害剤処理などにより、その機能をブロックした上で、各種食品たんぱく質/ペプチドに対する消化管ホルモン分泌応答を観察し、受容体として機能するかどうかを調べる。in vitroの試験において見出された、食品たんぱく質/ペプチド受容体候補分子について、ラット、マウス腸管での分布、局在を免疫組織染色により明らかにする。GPCRなどの受容体分子の免疫染色は、細胞内分子に比べると検出が困難であり、個々の分子について、種々の固定法、一次抗体を用いた最適条件の検討が必要になることも想定される。受容体の免疫染色を確立した上で、消化管内分泌細胞(CCK産生細胞、GLP-1産生細胞)での発現を調べるために、二重染色をおこなう。また、受容体候補の特異的阻害剤や既知のアゴニストなどを用いて、各種食品タンパク質/ペプチドに対する消化管ホルモン分泌応答を観察することで、in vivoでの受容体の機能を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の研究において、α-カゼインが、カゼイン加水分解物や他の食品たんぱく質の加水分解物よりも低濃度でCCK分泌を促進する結果が得られた。この強いCCK分泌促進作用を確かめるために、再試験を実施する必要が生じ、その後の細胞内情報伝達経路解析への着手が遅れ、使用を計画していた研究費を年度内に執行するに至らなかった。当該研究費を、上述の細胞内情報伝達経路解析のための消耗品費として使用する。平成24年度の研究費として、細胞培養、ホルモン定量のためのELISAキット、抗体。遺伝子発現解析などの消耗品に\1,000,000、旅費\250,000、その他\50,000の使用を計画する。
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Research Products
(1 results)