2011 Fiscal Year Research-status Report
非アルコール性脂肪性肝炎の新しい予防法の開発:ガーリック由来含硫化合物に着目して
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23780128
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
深尾 友美 お茶の水女子大学, 生活環境教育研究センター, 助教 (20470172)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ガーリック / NASH / 食品機能 |
Research Abstract |
食品機能性成分(ニンニク由来硫黄化合物等)の新規機能性研究として、アルコール性脂肪性肝炎(ASH)および非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)のモデルマウスに及ぼす影響の研究を立案した。ASHやNASHは生活習慣と関連が深く近年増加しており、新しい予防法の提案が求められている。 申請者はこれまでの研究で、ガーリックの加熱調理により発生するオイル状の含硫化合物diallyl trisulfide(DATS, CH2=CHCH2-SSS- CH2CH=CH2)が、実験的急性肝炎モデルにおいて肝障害予防効果を示すこと、体熱産生を誘導すること、脂質代謝異常を改善することを見いだしている(Hosono-Fukao et al., 2009)。これらの機能性は、アルコール性脂肪性肝炎および非アルコール性脂肪性肝炎で指摘されている病態と対応していることから、DATSの摂取はその治療や予防に応用できると考えた。そこでアルコール性脂肪性肝炎および非アルコール性脂肪性肝炎モデルマウスにDATSを経口摂取させ、その病態発症を予防・改善するか調べる研究を開始した。本年度は各モデル動物作製のための条件検討と、DATS投与予備実験を行った。8週齢雄のC57BL/6NCrSlcマウスをControl群、Control-DATS群、MCD-control群、MCD-DATS群の4群に分けControl食またはメチオニン・コリン欠乏食(MCD)を与えて飼育した。その間、DATSまたはVehicleを胃ゾンデにより週3回投与した。7週間目に解剖し、肝組織切片のHE染色とOil red O染色を行い、肝組織の脂肪変性、血清パラメータを評価した。その結果、DATS投与により肝の脂肪変性が改善される傾向が認められた。現在は、DATSが肝臓Triglyceride量に及ぼす影響について精査中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請時に使用を予定していた疾患モデルマウスに重大な問題があり、他のモデルへの切り替えが必要だった。験条件の再設定が必要となり、研究がやや遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定していたNASHモデルマウス(STAMマウス)は、最近、モデルとしての評価に否定的な意見が出ており使用を見合わせた。予定を変更して使用したMCD食誘導性の肝脂肪変性モデルで脂肪変性が確認されたため、今後もMCD食で実験を遂行する。DATS投与群においては肝脂肪変性の低減傾向が認められた。今後はインスリン抵抗性試験などの評価パラメータを増加させ、DATSを経口投与がNASH様病態の発症を予防・改善するか調べる予定である。さらに、DATS摂取がNASHモデルマウスの病態発症を予防・改善するメカニズムの解析として下記1~3を遂行を予定している。(1)肝機能保護作用:NASHにおける肝障害予防機構として、申請者のこれまでのデータから核内転写因子Nrf2による肝保護酵素の転写活性化とCYP2E1活性の阻害が考えられる。これらの標的分子とシグナル経路は明らかにするため、培養肝細胞株RL34とCYP2E1発現HepG2細胞にDATSを添加し、肝機能保護作用に関わるシグナル経路であるNrf2/Keap1経路の活性化と、CYP2E1阻害機構を明らかにする。(2)抗インスリン抵抗性作用:抗インスリン抵抗性作用としてインスリン受容体基質(IRS)のリン酸化を介したGlut-4の細胞膜への移行と血糖取り込み促進が考えられる。そこで培養脂肪細胞株3T3L1を用いてDATS添加した時のIRSシグナリングとGlut-4の膜への移行を中心に調べる。(3)既に得ているデータの追究:抗炎症作用と脂質代謝異常改善作用、体熱産生上昇作用についてはそれぞれ培養細胞とモデル動物を用いた検討で主要なメカニズムを明らかにしている(論文、未発表データ)。その継続としてsiRNAによる標的タンパク質候補のノックダウンや、標的タンパク質のアミノ酸置換がDATSの機能性に及ぼす影響を分子レベルで解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1年目の研究で使用予定だったSTAMマウスを購入しなかった。代わりにMCDモデルマウスで実験を行うこととし、当初予定から遅れて2年目からMCDモデルマウスの本実験を行う。必要なマウス購入費用、飼料代などを2年目にする研究費として計画している。そのほかは当初の計画どおり研究費を使用する。すなわち培養細胞モデル作成に必要な細胞株の購入、培養ディッシュ、抗体などの高価な試薬などに使用する予定である。
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Research Products
(4 results)