2012 Fiscal Year Research-status Report
非アルコール性脂肪性肝炎の新しい予防法の開発:ガーリック由来含硫化合物に着目して
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23780128
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
深尾 友美 お茶の水女子大学, 生活環境教育研究センター, 助教 (20470172)
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Keywords | garlic / diallyl trisulfide / 食品成分 |
Research Abstract |
食品機能性成分(ニンニク由来硫黄化合物等)の新規機能性研究として、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)のモデルマウスに及ぼす影響を検討した。 昨年度に引き続き、ニンニク由来含硫化合物diallyl trisulfide(DATS)を経口投与したNASHモデルマウスを解析した。NASHモデルとしてメチオニン・コリン欠乏食(MCD)摂餌モデルマウスを作成し、DATSが肝病変に及ぼす影響を解析した。マウスをControl群、Control-DATS群、MCD-control群、MCD-DATS群の4群に分けControl食またはメチオニン・コリン欠乏食を与えて飼育した。その間、DATSまたはVehicleを胃ゾンデにより週3回投与した。昨年度の検討ではMCD群の体重減少が顕著だったため実験期間を短縮し5週間目に解剖した。その結果、DATS投与によりMCD-DATS群の肝障害パラメータ(AST・ALT)の低下と、肝脂肪変性が改善される傾向が認められた。 肝保護作用機構を明らかにすることを目的として、DATSによるCYP2E1活性の阻害について検討した。肝抽出液にDATSを添加しCYP2E1活性を測定した結果、DATS濃度依存的に活性阻害が認められた。抽出液のペプチド消化物についてLC-MS/MS解析を行ったところ、CYP2E1タンパク質の活性中心に存在するシステイン残基への酸化修飾を検出しDATSがCYP2E1を直接阻害することが示唆された。 続いて、肝薬物代謝酵素のひとつであるGlutathione S-transferase活性を測定した。その結果、Control-DATS群でGST活性が増加したがMCD-DATS群では上昇は見られなかった。以上のことからMCD-DATS群で観察された肝保護作用にGlutathione S-transferaseは関与しないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度に、肝炎モデルマウスの病態解析を行い、その結果を基に肝保護作用のメカニズム解析を行ったが、分析機器のトラブルによりデータの取得が遅れている。計画を変更して細胞レベルの実験を並行して進めており、全体としてやや遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度までの検討で、MCDモデルにおいてDATSの肝保護作用が認められたが、その効果は限定的であった。モデル動物そのものの問題である可能性もあり引き続き解析を行うが、他のNASHモデルやアルコール性脂肪性肝炎モデルマウスで検討を行うなど実験系の改善が望まれる。 MCDモデル動物で見られたように、DATSは脂肪性肝炎を抑制する可能性がある。そのメカニズムの解析として、得られたマウス肝組織や培養細胞を用いた検討を続ける予定である。特にNASHを発症させないマウスで解毒酵素GSTの上昇が見られたことから、MCDマウス群との比較をオミクス手法等を用いた各種方法により行いたいと考えている。 モデル動物において改善作用が見られた場合、抗炎症作用と脂質代謝異常改善作用、体熱産生上昇作用についての検討として、siRNAによる標的タンパク質候補のノックダウンや、標的タンパク質のアミノ酸置換がDATSの機能性に及ぼす影響を分子レベルでの解析も視野にいれる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度で使用予定だった分析機器にかかる消耗品のほか、培養細胞モデル実験に必要な培養ディッシュ、抗体などの試薬に使用する予定である。このほか研究の遅れから学会発表が本年度になったため、そのための旅費に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)