2011 Fiscal Year Research-status Report
構造類似性に基づく静菌性乳化剤の乳化破壊メカニズムの解明と食品分野への応用
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23780133
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松宮 健太郎 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (60553013)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 乳化安定性 / 油脂抽出 / タンパク質 / 香気放散 / 構造類似性 |
Research Abstract |
構造の類似性と不安定化の関連性の解明については、これまで申請者が用いてきた方法、すなわち調製したエマルションに乳化剤溶液を加え、平均粒子径の変化を時間依存的に測定する方法で不安定化の評価を行った。平均粒子径変化の測定にはレーザー回折式粒度分布計を使用し、炭化水素よりも天然油脂に近い構造を有する脂肪酸メチルを利用して実験を行った。しかしながら、構造の類似性は必ずしも不安定化とは関連しない可能性のあることが示唆された。 一方、香気分析への応用では、炭化水素を使用してエマルションを調製した。現在香気分析を鋭意進めていて、ある程度の傾向が見られるところまで分析は進んだが、測定精度が向上せず、現状では合一の影響による明確な差は見られていない。 油脂分別抽出の試みでは、油脂抽出の可能性を簡便に評価するため、初めに市販の豆乳と牛乳・ココナッツミルクを大量かつ安価に手に入るサンプルとして用意し、これらに乳化剤溶液を加えて抽出試験を行った。その結果、適切な条件を選択することで牛乳とココナッツミルクについては、油脂を抽出できる可能性のあることが明らかになった。すなわち、天然の油脂は物理的な操作だけでは抽出できないが、オートクレーブによる高温処理を加えることで、油脂が遊離することが示された。今後他の抽出条件を検討することにより、さらに応用可能性が高まると考えられる。一方、豆乳については、上記の物理的な条件に加え、酵素による化学的な処理を行ったが、油脂の分離は見られなかった。この原因は定かではないが、平成24年度に実施予定の生の大豆からの抽出試験により、目的が達成される可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
構造の類似性と不安定化の関連性の解明については、実験自体はそこそこ進んでいるものの、当初予想していた結果が得られず、現在評価方法を再検討しているところであり、その分データ取得に影響が出ている。また、香気分析への応用については、モデル系を利用しているものの、実験者の技術の習熟が必要になる部分が生じたため、実験操作の練習と予備実験を行なっており、実験計画が多少遅れる原因となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度も研究責任者は単独で研究を推進することになっているが、研究協力者である大学院生と綿密な連携を取り、特に研究がやや遅れ気味になっている香気放散挙動の解析についてさらなる研究推進を図ることとする。また、研究責任者は当該補助金によって参加した学会活動で積極的に情報収集を行ったが、研究の遂行上障害となっていた部分について、非常に有益な情報を得ることができた。そこで、今後はこの情報を研究計画に反映し、必要な部分については適宜研究計画を柔軟に変更することで、研究の推進を図ることとする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費はこれまで実施してきた研究計画を遂行し、さらにデータを取得するために使用する。平成24年度は主に消耗品に研究費を使用し、最終的な成果報告に向けて研究の総仕上げを行う。また、今年度は成果報告のために積極的に学会等に参加し、得られた研究成果の社会への浸透を図る。
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