2011 Fiscal Year Research-status Report
ビタミンB-12の腎臓における栄養素再吸収制御機能の解明
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23780144
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
小林 謙一 東京農業大学, 応用生物科学部, 助教 (80434009)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ビタミンB12 / ビタミンA / ビタミンD / リン代謝 / 骨代謝 / 腎臓 / メガリン |
Research Abstract |
本研究の目的は、腎臓におけるMegalinを介した栄養素再吸収にビタミンB12が必須であることを実験的に証明することである。具体的には、(1)ビタミンB12欠乏モデルラットを作製し、腎臓におけるビタミンAおよびビタミンD、そしてリンの再吸収に及ぼす影響を検討する、(2)培養細胞を用いその分子メカニズムを検討するという2点を実施することが本研究課題の概要である。 そこで、本年度は、100日間ビタミンB12欠乏飼料で飼育したラットをビタミンB12欠乏ラットとして作製した。このラットを用い、(1)対照群、(2)欠乏群、(3)ビタミンB12再供給群(7日間)を設定し、飼育を実施した。その結果、ビタミンB12欠乏によって、Megalinが尿細管腔側細胞膜への蓄積と、ビタミンA結合タンパク質であるRBPの細胞内への取込みが抑制の確認をとることができた。また、血清中、肝臓中のRBP量も、ビタミンB12欠乏群で減少し、再供給群で回復することが認められた。それに加え、興味深いことに血中ビタミンAも同様の挙動を示した。次に、ビタミンB12欠乏が骨代謝に関連するミネラルに及ぼす影響について検討することを目的に、血中無機リン濃度を測定した結果、ビタミンB12欠乏群で対照群に比べ有意な上昇が、再供給群で回復する傾向が観察された。その結果を踏まえて、尿中の無機リンの再吸収に関与するNaPi共輸送体の免疫染色を行ったが、NaPi2Cに関しては、尿細管腔側細胞膜への蓄積する傾向が認められたものの、NaPi2aに関しては、明瞭な実験的結果を得ることができなかった。今後は、再現性を含めた検討を行っていく必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、100日間ビタミンB12欠乏飼料で飼育したラットをビタミンB12欠乏ラットとした。このラットを用い、(1)対照群、(2)欠乏群、(3)ビタミンB12再供給群(7日間)を設定し、飼育を実施し、サンプリングも終了した。このサンプルを利用して、まず血中の一般成分をはじめ、ビタミンA、無機リン、カルシウムの濃度の検討を完了した。その結果、ビタミンB12依存的な血中ビタミンA、無期リン濃度の変化を明らかにした。次に、Megalin、RBP、DBP、NaPi共輸送体の免疫組織学的検討を実施した。その結果、ビタミンB12欠乏によって、Megalinの尿細管腔側細胞膜への蓄積と、RBP、DBPの細胞内への取込みが抑制の確認をとることができた。NaPi共輸送体に関しては現在進行中であるが、その他については実験結果を得ている。また、Megalin、RBP、DBPやNaPiの存在量を、Western Blotting法を用い検討した。その結果、Megalin、RBP、DBPについては、組織化学的結果に連関する結果を得た。そして、遺伝子発現レベルで調節されているかどうかを明らかにする目的で、Real-time PCR法を用いて比較した。その結果、腎臓のMegalin、RBPの両遺伝子発現については変化が認められなかったものの、腎臓DBP遺伝子については、ビタミンB12依存的な変化が認められた。一方、詳細なメカニズム解析を行うために、培養細胞を用いて、細胞内局在性などを中心に解析していく計画(平成24年度)であるが、そのため実験系の構築を行なうための予備的検討を行った。平成23年度の研究計画の約80%が完了している。残り20%に関しては、実施は行ったものの、条件検討段階および再検討を要する段階であるので、平成24年度の早期に達成できるようにしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に動物実験を主体的に行った結果、その80%が達成できたと考えている。平成24年度は、動物実験で残った課題点を解決するとともに、詳細なメカニズムを分子レベルで解明する目的で、培養細胞実験を中心に行う予定である。概要は以下の通りである。本研究では、腎細胞株であるオポサム腎(OK)細胞 やCaco-2細胞を用い、ビタミンB12欠乏ラットの血清添加が、Megalin及びNaPiをはじめエンドサイトーシス関連因子の発現量(タンパク質レベル・遺伝子発現レベル)及び細胞内局在性に及ぼす影響を検討する。ビタミンB12欠乏モデルラットにおける、Megalin、RBP、トランスサイレチン、TCII、DBPやNaPiの存在量を、Western Blotting法を用い検討する。また、ビタミンB12欠乏血清がエンドサイトーシス機構に及ぼす影響を正確に理解するために、Megalinやエンドサイトーシス関連因子(Cubilin、クラスリン、Caveolin-1、Rab5、Dab2など)をRNAiを用いてノックダウンさせた後に、ビタミンB12欠乏血清添加条件下での影響を、組織化学的、タンパク質、そして遺伝子発現レベルで検討する。それに加えて、ビタミンB12欠乏症状の1つに、血中および尿中のメチルマロン酸濃度が上昇するメチルマロン酸尿症がある。ビタミンB12欠乏がMegalinを介したエンドサイトーシスに及ぼす影響が、ビタミンB12によるものか、メチルマロン酸などの尿中の生理的条件の変化によるものかを明らかにする必要がある。そこで、OK細胞へのメチルマロン酸添加が、エンドサイトーシス機構に及ぼす影響を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の研究費の使用計画は、動物実験関連で残っている実験関連費用として、組織化学的実験関連試薬、分子生物学的・生化学的実験関連試薬およびそれらに付随する消耗品に充当する。また、培養細胞実験に必要な試薬及び消耗品が主要な支出となる予定である。また、これらの実験を補助してもらえる補助者に対する謝金にも充てる。そして、海外学会(11月シドニーで開催される研究会および研究者との打ち合わせ)および国内学会(生化学会)参加の旅費、そして論文公表のための英文校閲及び別刷の費用にも充当したいと考えている。
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