2011 Fiscal Year Research-status Report
ビタミンA摂取が腸管免疫バランスを制御する樹状細胞の機能発現に与える影響
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23780148
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
中妻 彩 徳島文理大学, 薬学部, 助教 (30446075)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 食品機能 / 脂質 / アレルギー / 粘膜免疫 / 免疫寛容 / ビタミンA / 樹状細胞 / T細胞 |
Research Abstract |
ビタミンA代謝産物であるレチノイン酸は腸管指向性リンパ球、Foxp3陽性誘導型制御性T細胞(iTreg)、IgA抗体産生細胞の分化誘導に寄与し、腸管免疫システムの恒常性維持に重要な役割を担っている。しかし、ビタミンA欠乏(Vit.A(-))マウスでは、炎症誘導型T細胞の分化誘導が亢進しており、食物アレルギーや炎症性腸疾患などの発症をもたらす可能性がある。そこで本研究では、T細胞の機能分化をコントロールする樹状細胞(DC)の機能成熟にビタミンAがどのような影響を与えるのかを解明するため、Vit.A(-)マウスを作製し、各リンパ系組織のDCを比較解析した。1、小腸パイエル板(PP)、腸間膜リンパ節(MLN)または皮膚の所属リンパ節(PLN)からDCを単離してT細胞の機能分化誘導能を解析した。Th1誘導能について差異は認められなかった。PPとMLN-DCはFoxp3陽性iTreg誘導能が高く、逆にPLN-DCはTh2やTh17誘導能が高かった。2、Vit.A(-)マウスでは、MLN-DCのFoxp3陽性iTreg誘導能は減少し、Th1、Th2、Th17誘導能は顕著に亢進していた。しかし、PPとPLN-DCはビタミンA欠乏による影響は小さかった。3、Vit.A(-)マウスのMLN-DCでは、CD40、CD86、MHC class II分子やIL-6、IL-12p40の発現が上昇していた。 以上の結果より、Vit.A(-)マウスではMLN-DCによる炎症誘導型T細胞への分化誘導が亢進しているが、DCの機能発現におけるビタミンAの寄与は、組織によって異なることが示唆された。腸型の制御性DCの分化制御機構の解明は、腸免疫学的疾患の予防、治療に有用な機能性食品や医薬品などの技術開発や、DC療法の応用へと大きく発展することが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおりに、ビタミンA欠乏マウスとコントロールマウスを用いたDCの比較解析は進み、次年度に計画している経口免疫寛容誘導モデルや、それをさらに発展させたアレルギーモデルの作製に着手している。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)ビタミンA欠乏マウスを用いた食物アレルギーモデルを解析 ビタミンA欠乏マウスに抗原を経口投与した後、同一抗原を腹腔内に免疫すると、急激な下痢発症から腸機能低下に至る衰弱など、食物アレルギーの様相を呈する個体が観察される。そこでまず、ビタミンA欠乏マウスを用いて、経口免疫寛容の誘導能を評価する。所属リンパ節を採取してT細胞の増殖アッセイを行い、血清や糞便中の抗原特異的抗体価についてはELISAを用いて検定する。この時、抗原の投与を腹腔内または胃内、もしくは皮下などの異なるルートで行い、腸の所属リンパ節と皮膚の所属リンパ節における反応性を比較検証する。(2)ビタミンA欠乏による炎症誘導型DCの分化誘導メカニズムを解明 平成23年度に得られた結果を基にして、ビタミンA欠乏下で腸の炎症誘導に関わる因子の候補を絞り、その因子の発現制御に関わる細胞や、腸環境因子の探索を行う。腸組織の免疫組織染色や、単離した細胞のFACSやreal-time PCRを行い、ビタミンA欠乏状態で出現もしくは消失する特殊な細胞集団の同定や、炎症誘導に関与する腸環境因子の発現変動などについて検証する。また、(1)の食物アレルギー発症時の腸組織についても同様の解析を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究で主な対象としているDCは組織中の頻度が非常に低いために、実験で必要な細胞数を確保するための工夫が必要である。そこで、多数のサンプルから短時間で目的の細胞を調製することのできるMACSを活用して、実験の効率化を図る。そのため、MACS試薬(MACSビーズ1本10万円前後、MACSカラム1セット4~6万円)、細胞培養試薬(細胞培養用牛胎児血清や培地など)、マウス(マウスの購入費および飼育費)、プラスチック器具にかかる費用が大きな割合を占める。また本研究にはビタミンA欠乏マウスと、ビタミンAを含有したコントロール飼料摂取マウスが必要不可欠である。ビタミンA欠乏飼料とコントロール飼料の調製には1ヶ月当たり約3万円かかるため、それぞれ年間36万円は必要である。ELISA、FACS、免疫染色で必要な抗体や、PCRの酵素類は1本3~7万円相当である。従って、本研究を通じて物品費が大きくかかるため、交付申請書で挙げた平成24年度の物品費147万円と合わせて、平成23年度の未使用額約51万円はすべて物品費に充てる。また、交付申請書のとおり、研究成果を発表するための学会参加にかかる費用として旅費に8万円、論文投稿料としてその他の費目に5万円を充てる。
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Research Products
(6 results)