2012 Fiscal Year Research-status Report
カルパインの制御異常による胃粘膜損傷の発生機構に関する研究
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23780152
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
秦 勝志 公益財団法人東京都医学総合研究所, 生体分子先端研究分野, 主席研究員 (10392375)
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Keywords | カルパイン / 胃腸粘膜防御 / プロテオリシス |
Research Abstract |
胃粘膜は複雑なシステムにより外的ストレスから保護されており、胃粘膜上皮表層の表層粘液細胞は大きな役割を果たす。我々は、この細胞に特異的に発現する細胞内プロテアーゼ、カルパイン8(CAPN8)とカルパイン9(CAPN9)について、ノックアウトマウスの解析から、これらが複合体G-カルパインを形成してストレスに応答した胃粘膜防御に働くことを明らかにしてきた。 本年度は、(1) G-カルパインによる胃粘膜防御機構の検討と、(2)CAPN8と9の複合体形成の意義の解析を行った。(1)について、結腸ガン由来細胞株を用いたノックダウン実験で、G-カルパインが表層粘液細胞の増殖の制御を行うことを見出した。また、CAPN8では少なくとも1種類、CAPN9では6種類の一塩基多型(SNPs)が酵素活性の減弱・消失をもたらすことをin vitro解析によって明らかにして、胃粘膜損傷に伴う疾患のリスク因子としてのCAPN8/9の可能性を見出した。CAPN8/9による粘液細胞の増殖の制御機構の解明と、ヒト生検を用いたCAPN8とCAPN9の遺伝子及びタンパク質レベルの解析が今後の課題である。(2)について、昨年度確立した発現・精製系を用いてリコンビナントG-カルパイン及びその変異体を精製し、これらの性質を比較解析したところ、G-カルパインにおいてCAPN8はプロテアーゼ活性サブユニット、CAPN9は制御サブユニットとして主に機能することを明らかにした。これを分子レベルで説明するため、G-カルパインの構造解析を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
G-カルパインが発現する粘液細胞の増殖・移動制御することを示唆する結果が得られたことは、G-カルパインによる胃粘膜防御のメカニズムを解明する上で大きな進展であった。また、CAPN8とCAPN9が複合体を形成する意義の解明に向けてCAPN8とCAPN9それぞれのG-カルパインにおける役割を生化学的に明らかにすることができたことも大きな進展であった。
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Strategy for Future Research Activity |
G-カルパインが関わる胃粘膜防御のメカニズムについて、アルコールや非ステロイド系抗炎症剤投与などによって胃粘膜損傷を引き起こした時の、胃粘膜粘液細胞の増殖・移動を組織学的に検討したい。具体的にはBrdU投与による増殖・移動のモニタリングを考えている。また、最近、G-カルパインの腸管免疫への関与を示唆する実験結果を得た。腸管Th17細胞分化制御への関与を念頭に免疫学的な解析を進めていきたい。G-カルパインにおけるCAPN8とCAPN9の役割分担を生化学的に明らかにできたので、構造解析により分子レベルで説明することを目指す。次年度は試料の結晶化の条件決定を目標としている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究代表者の所属機関には機器類など備品は整っているので、これらを使用することで研究を進める。本研究はマウスを用いる実験が中心になるため、その繁殖・購入の費用、また、免疫学的解析で必要となる抗体等の比較的高額な消耗品の購入費に次年度の研究費の多くを充てる予定である。その他、論文校正・投稿や、海外学会2件の参加を予定しているため、これらにかかる費用に充てる予定である。
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