2011 Fiscal Year Research-status Report
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23780155
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
阿部 晴恵 新潟大学, 自然科学系, 助教 (60462272)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 三宅島 / 種子散布 / 鳥類 / 外来種 / 遺伝マーカー |
Research Abstract |
2000年の噴火によってその森林の70%近くが破壊された三宅島において、火山ガスに対する耐性が強く噴火の高被害地域においても繁殖活動を行っている植物の存在及び種子散布に関わる動物は、その森林生態系の回復にとって重要な役割を果たすと考えられる。このため本研究では、噴火後の植生回復の鍵となる系、特に種子散布系に注目し、噴火による被害程度の異なる地域において主要な散布者となっている鳥類相の把握及び散布される種子(糞内種子)の質的量的評価を行う。また、高被害地域に鳥類を誘引する餌資源の一つと考えられる昆虫相を糞分析により把握することで、種子散布系に関わる捕食-被捕食系の抽出を行う。さらに外来種のホンドイタチによる捕食が相互作用系に与える影響についても評価する。 初年度は、樹木の種子散布後期にあたる冬期に、噴火の被害程度の異なる10地点において、ラインセンサス法を用いた鳥類相の密度調査及び糞の採取を行なった。採取された糞のうち、約8割の糞内容物の解析を終えた。 その結果、高被害地において採取された糞内(N=56)から最も多く出現するのは昆虫類98%であり、果実種子は2%のみであった。果実種子はヒサカキ種子が90%を占めた。一方、低被害地(N=42)では、種子を含む糞が最も多く、80%を占めた。出現種はヒサカキ58%、フウトウカズラ15%、オオムラサキシキブ12%、タブノキ2%、その他13%の順。採取された糞は、高被害地では鳥類が約82%、イタチ15%、不明3%、低被害地では鳥類88%、イタチ9%、不明3%(ヒキガエル?)であった。さらに糞中に多く含まれるヒサカキについては、被害程度の異なる地域において散布される種子の遺伝的多様性を把握するために、SSRマーカー7座を開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は噴火の被害程度の異なる10地点、つまり植生回復状況の異なる地点において、ラインセンサス法を用いて鳥類相の把握とその密度調査を行うこと、また、 各調査地において鳥類およびイタチの糞を採取し、糞をした鳥類や糞内の種子及び昆虫相の同定を行うことを目的とした。 鳥類相の調査及び糞サンプルの採取は、春期にも実施する予定であったが、申請時と所属機関が異動したこと、また前所属機関(東北大学)が震災の影響を受け、業務が1ヶ月以上遅れたことなどから、異動に伴う引継ぎに時間が掛かり、実施できなかった。しかし、東京大学の研究チームによる鳥類相のセンサスデータが存在するため、本研究で実施できなかった分の補完がされる。 糞分析においては、糞をした鳥類の同定は形態により把握出来た。糞内の昆虫相の同定は、現所属機関の新潟大学においては実験設備が整っていないため、前職の東北大学で予備実験を行なった段階である。また、平成24年度に予定している糞内における主要な種子の遺伝的多様性比較については、今年度に遺伝マーカーを開発し、数調査地分の解析を行うことが出来た。 全体を通じて、平成23年度分の糞分析調査は職場の異動等の理由で遅れ気味であるが、平成24年度に予定している遺伝解析実験が先行しているため、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、各調査地において鳥類相の密度調査及び鳥類・イタチの糞を採取する。採取した糞内の昆虫相は、目視では同定することが難しいため、DNAバーコード情報に基づき、可能な限り種の同定を行う。 さらに、糞内における主要な種子として、ヒサカキを対象にマイクロサテライトマーカーを用いた遺伝解析を行い、調査地(伊豆半島及び隣接諸島も含む)間、及び鳥類間の比較を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に実施できなかった野外調査があるため、三宅島及び近隣諸島(比較研究のため)への旅費、および前所属機関の東北大学で実験を行うための旅費として40%程度を使用する。また主に実験に必要な消耗品の購入で40%程度、野外調査や解析費必要な消耗品で10%をを使用する予定である。残り10%をサンプル送付のための宅配便や英文校閲代(その他)に使用する。
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Research Products
(1 results)