2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23780155
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
阿部 晴恵 新潟大学, 自然科学系, 助教 (60462272)
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Keywords | 三宅島 / 種子散布 / 鳥類 / 外来種 / 遺伝マーカー |
Research Abstract |
2000年の噴火によってその森林の70%近くが破壊された三宅島において、火山ガスに対する耐性が強く噴火の高被害地域においても繁殖活動を行っている植物の存在及び種子散布に関わる動物は、その森林生態系の回復にとって重要な役割を果たすと考えられる。このため本研究では、噴火後の植生回復の鍵となる種子散布系に注目し、噴火による被害程度の異なる地域において主要な散布者となっている鳥類相の把握及び散布される種子(糞内種子)の評価を行う。 初年度は、噴火の被害程度の異なる地点において、鳥類相の密度調査と糞の採取を行なった。その結果、高被害地において採取された糞内から最も多く出現する果実種子はヒサカキであった。このため24年度は、ヒサカキを対象に、被害程度の異なる地域において散布される種子の遺伝的多様性を把握することを目的とした。まず、三宅島におけるヒサカキ集団の遺伝的組成について、多型のあったSSRマーカー4座を用い、伊豆半島集団との比較を行なった。その結果、三宅島の集団の遺伝的多様性は高く(伊豆半島:ヘテロ接合度の期待値:He= 0.592、三宅島の値は以下)、遺伝的分化はほぼみられなかった(Fst=0.06)。次に、調査地の遺伝的構造の把握のために、被害程度の異なる地点に0.3haの8調査地を設定し、プロット内すべての成熟木について、調査地間の遺伝的構造を比較した。その結果、Heは0.750(伊々谷)から0.589(坪田)、平均0.681と比較的高い値であった。標高及び被害程度との相関は見られなかった。プライベートアレル数は0から1.750(平均0.792)、ローカルコモンアレル(25%)は0.500から1.750、平均1.042であり、標高及び被害程度との相関は見られなかった。総じて、坪田、伊ケ谷プロットで遺伝的多様性が高く、伊豆、雄山プロットで遺伝的多様性が低い結果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、各調査地において鳥類・イタチの糞の採取、および採取した糞内の昆虫相、鳥類相の同定を行うこと、さらに、糞内における主要な種子として、ヒサカキを対象にマイクロサテライトマーカーを用いた遺伝解析を行い、調査地(伊豆半島及び隣接諸島も含む)間の比較を行うことを目的としていた。 調査地における糞は東京大学研究員のご協力のもと提供して頂いた。、またヒサカキを対象とした遺伝解析については、成熟木について全て終了した。種子は現在解析中である。昆虫相や鳥類相の遺伝解析を用いた同定は、組み換えDNA実験が必要であり(申請時では実施可能施設に所属していたが、現所属場所には施設がない)、現在、実施可能施設を検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である25年度は、各調査付近で採取した糞内のヒサカキ種子について遺伝解析を行ない、さらに昆虫相や鳥類相の遺伝解析を用いた同定を行う。結果に基づき、鳥類もしくはイタチによる種子散布系について各調査地における系の強度(頑健性)を推定し、どの鳥類が植生回復に関わる種子散布に貢献するのか、どの植物が効果的に種子散布され、植生回復に効いてくるのかについて、具体的な構成種の把握と系の評価を行う。また、種子散布系を誘引すると考えられる(高被害地へ鳥類を誘引する一つと考えられる)昆虫相と鳥類相との関係を把握することで、結びつきの強い重要な捕食-被捕食者系の評価も行う。さらに、植生回復に関わる構成種(相互作用系)が普通種によるものなのか、特殊な構成種によるものなのを推定し、撹乱に対して普遍的に耐性のあると考えられる(どの地域においても植生回復の鍵となる)系の評価を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
遺伝解析のための実験に必要な旅費(東北大学等)に30%、実験に使う試薬等の消耗品に40%、成果発表に関わる校閲代や旅費に30%の使用を予定している。
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