2011 Fiscal Year Research-status Report
大型哺乳類による種子散布特性の地域間比較:マカク属の霊長類を対象に
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23780160
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
辻 大和 京都大学, 霊長類研究所, 助教 (70533595)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交流 |
Research Abstract |
平成23年度はインドネシアに2回渡航し、霊長類を中心とした動物散布者の採食行動の観察を行うとともに、糞サンプルの採集および内容物の分析を行った。その結果、とくにインドネシアにおいて潜在的な散布者となる動物を特定することに成功し、年度の途中からは行動観察をカニクイザル、シルバールトン、ルサジカ3種にしぼって継続することにした。申請者の不在中はインドネシア人アシスタントにサンプル収集を依頼している。 これと並行して、シルバールトン・カニクイザルの行動圏内の毎木調査を行い、果実生産木の位置を関係を明らかにしたほか、霊長類による果実の選択に関わる要因(これは種子散布に直結する問題である)を明らかにするために、各果実の栄養分析を実施した。 いっぽう、ベトナムで種子散布研究のための予備調査を行った。霊長類二種の直接観察および糞採集を行ったほか、自動撮影カメラを使用して散布者の特定を試みたが、後者については芳しい成果は得られず、アカゲザルの糞を半年間採集して調査を切り上げ、残りの時間と研究費をインドネシアに集中することにした。 日本国内については、3.11震災で調査地の金華山島周辺が壊滅的な被害を受けたため調査を延期せざるを得ず、年度終わりの3月に予備的な観察を行うにとどまった。いっぽう、金華山で過去に収集した糞サンプルの分析結果を論文にまとめ、学術誌に公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インドネシアでの調査については、種子散布者として機能しうる動物の特定ができたので、次年度から具体的なデザインをたてて調査の実施が可能となった。ベトナムでの調査は予備的なものにとどまったものの、インドネシア、日本と比較可能な種子サンプルの収集を行うことができた。日本(金華山島)での調査については、震災から一年が経過し、被災地の状況も落ち浮いてきたため、次年度以降に本格的な調査を再開できると見込んでいる。 いっぽう、研究成果の公開については、本年度は種子散布に関する論文3編をはじめ、9編の論文を本公表しため、当初の計画以上に達成できたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、インドネシアに二回(4月、10-12月)の渡航し、本年度特定した種子散布者による散布特性の比較を実施する。そのために、行動観察および糞分析を実施する。 いっぽう、国内調査については金華山島に3-4回渡航し、ニホンザルの行動観察および糞サンプルの採集・分析を行う。 研究成果はすみやかに日本哺乳類学会、日本霊長類学会、日本生態学会で発表するとともに、ベトナムで得られたサンプルの分析結果とあわせて、国際学術誌に投稿する。 いっぽう、各地で集めた糞に含まれる種子の発芽実験を実施する。研究所内に温室ないしビニルハウスを設置し、冬期日本にいる間に実験する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、インドネシアに二回(4月、10-12月)の渡航を予定している。又、国内調査で金華山島に3-4回渡航する。旅費はこれらの調査に加えて、国際霊長類学会、日本哺乳類学会、日本霊長類学会、日本生態学会への参加にあてる。インドネシアでの調査では、アシスタントやカウンターパートへの謝礼も必要となる。 いっぽう種子の発芽実験の実施のために、研究所内に設置する温室ないしビニルハウスの購入を予定している。
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