2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23780164
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岩永 史子 九州大学, 持続可能な社会のための決断科学センター, 助教 (50548683)
|
Keywords | 外来種 / 浸透圧調整 / 形態的適応 / タマリスク / 環境ストレス |
Research Abstract |
本研究は、アメリカ西部乾燥地に侵入した中国原産の外来種・タマリスクが、在来種をほとんど駆逐するなど、自生地とまったく異なる生態的挙動を示すことに着目し、この生理的要因を、適合溶質という多様なストレス耐性獲得に必須な物質の蓄積能から明らかにしようとするものである。そのために(1) 侵入地および自生地での生態的調査による適合溶質の定性定量解析とともに、(2) 各生育地から得た苗木を用いたモデル実験でのストレスに対する成長反応の解析を併せて行った。実験では各生育地から採取した挿し木苗の耐塩性に特に注目し、植物内に蓄積された適合溶質蓄積と植物体の生理活性維持との関係、部位・器官ごとの適合溶質蓄積とNa+移動および形態的適応との関係について解析を試みた。 その結果、自生地のタマリスク生育環境は、導入地アメリカと比較して、表層土壌中のNa濃度が約100倍であったが、植物体中のNa濃度は同程度であった。土壌塩濃度の増加が葉内塩濃度との間に顕著な相関が認められないことは、自生地、導入地ともに認められた。このことから高土壌Na環境での生育に必要不可欠な葉内のNa濃度維持に、塩腺からの過剰なNa排出が重要であることが示された。しかし、土壌中塩濃度が高い生育が抑制された個体では、葉内の浸透調整に重要なアミノ酸の一種であるプロリンが蓄積しており、同種の耐塩性に寄与していることが明らかになった。 2年間の塩水灌漑によって育成したタマリスク苗の葉内塩濃度蓄積は処理水の塩濃度増加に対して明らかな変化を示されず、塩腺からの過剰なNa排出が本樹種の耐塩性に重要であることが示された。しかし浸透調整物質による塩ストレス下の生理作用で改善効果を明示することができなかった。引き続き、浸透調整物質の蓄積と植物の水分利用特性および生理活性に与える効果について検討する必要がある。
|