2012 Fiscal Year Research-status Report
スギ雄花特異的遺伝子はなぜカルスで発現しないのかー遺伝子組換え技術への応用ー
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23780174
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
栗田 学 独立行政法人森林総合研究所, 林木育種センター, 室長 (40370829)
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Keywords | 遺伝子発現 |
Research Abstract |
本研究はスギにおける遺伝子組換え技術の高度化を目指し、導入遺伝子が目的とする組織以外の組織での発現(異所的な発現)を完全に抑える技術の開発を目的とする。スギの雄花特異的な発現を示す遺伝子Muka14 をモデルに、スギの雄花と雄花以外の組織におけるMuka14 遺伝子のゲノム配列のメチル化の程度の違いを解析し、エピジェネティックな発現調節機構の観点から遺伝子の発現抑制メカニズムの解明を目的とする。この目的を達成するために、Muka14遺伝子が発現する「スギ雄花」と発現が確認されない「スギカルス」からゲノムDNA を抽出し、Muka14 遺伝子のメチル化の程度を比較解析し、メチル化に関与するゲノム領域の特定を試みることとしている。昨年度、Muka14-p::GUSを導入したスギ形質転換体を用い、Muka14 遺伝子は減数分裂期前の花粉母細胞及びタペート組織で発現することを明らかにした。今年度はまず、雄花から花粉母細胞及びタペート組織からなる「葯」のみを効率よく採取するための手法としてCryomicrodissection法を適用し、葯組織の効果的な採取手法を開発した。Cryomicrodissection法を用いることによって、Muka14遺伝子が発現しない雄花の鱗片組織や随組織を除くことが可能となり、カルスから抽出したゲノムDNA由来のMuka14遺伝子領域とメチル化の程度を比較する際に、メチル化の違いがより鮮明に検出できると考えられる。さらに、バイサルファイト処理後のMuka14遺伝子領域を効果的に増幅するためのプライマーセットの設計、作成を行った。現在、Cryomicrodissection法を用いてサンプリングした葯由来のゲノムDNA及びカルス由来のゲノム、発現の有無によるMuka14 遺伝子のメチル化の差異について解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はスギにおける遺伝子組換え技術の高度化を目指し、導入遺伝子が目的とする組織以外の組織での発現(異所的な発現)を完全に抑える技術の開発を目的とする。スギの雄花特異的な発現を示す遺伝子Muka14 をモデルに、スギの雄花と雄花以外の組織におけるMuka14 遺伝子のゲノム配列のメチル化の程度の違いを解析し、エピジェネティックな発現調節機構の観点から遺伝子の発現抑制メカニズムの解明を目的とする。本研究を進める上で、Muka14遺伝子が発現している組織のみをいかに濃縮して採取できるかという点が重要である。今年度、Muka14遺伝子が発現している花粉母細胞及びタペート組織を濃縮して単離する手法としてCryomicrodissection法を適用し成功をおさめた。本成果により目的領域のメチル化の違いがより鮮明に検出できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
Cryomicrodissection法を用い濃縮して採取した葯由来のゲノムDNA及びカルスから抽出したゲノムDNAをもちいてMuka14遺伝子のプロモーター領域を中心にメチル化解析を進める。今年度設計したバイサルファイト処理後のMuka14遺伝子用プライマーセットを用いてMuka14遺伝子領域の増幅、シーケンスを行い、発現の有無とゲノムのメチル化の程度の違いを解析を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
Muka14遺伝子のメチル化の程度を調べるため、分子生物学用試薬及びバイサルファイトシーケンス用試薬等を購入する。また、成果の報告を行うため学会参加旅費等として使用する予定である。
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