2012 Fiscal Year Research-status Report
森林性キノコバエ類による栽培きのこ被害の解明と緩和手法の開発
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23780176
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
末吉 昌宏 独立行政法人森林総合研究所, 九州支所, 主任研究員 (80435586)
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Keywords | 双翅目 / キノコバエ / きのこ / 特用林産 / 森林 / 環境 |
Research Abstract |
大分県日田市で20 ヶ所(シイタケ菌床施設 3, 人工林 6, 天然林 6, シイタケほだ場 5)の調査地を設定した。2012 年 2 月から 6 月までの間および 9 月から 11 月までの間にそれぞれ月に1 回ずつ計 8 回、各調査地内に設置した 10m 四方のコドラート 1 か所で 30 分間、その周囲の林分内で 30 分間、捕虫網によるキノコバエ類の採集を行った。ルンド大学(スウェーデン)およびコペンハーゲン大学(デンマーク)に所蔵されているヨーロッパ産キノコバエ類を用いて、上記調査で得られたキノコバエ類標本の同定を行った。 キノコバエ類の群集構造が調査地間でどのように異なるかを明らかにするため、各調査地で得られた属数を比較し、属を単位として主成分分析を行った。その結果、菌床施設で発生しているキノコバエ類の属数は野外のそれらより明らかに少ないこと、天然林・人工林・ホダ場の間では大きく異ならないことが分かった。また、菌床施設で発生しているキノコバエ類群集は野外のそれらとは大きく異なっていること、天然林と人工林の間では一部重複しながら、異なる群集が形成されていることが分かった。 同定作業の結果、従来、ヨーロッパと日本に共通して分布するとされていたキノコバエ類のいくつかは、ヨーロッパと日本の間で別種であることが分かった。また、得られた標本には、日本ではまだ知られていない、あるいは科学的にまだ知られていない種が含まれていることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
原木シイタケ栽培で被害が報告されているキノコバエ類の防除技術開発に向けて、異なる森林タイプ間のキノコバエ類の群集サイズの解明、在不在データの蓄積を行った。H24 年度に計画していた、標本・データ収集、樹木の種類・きのこ本数のデータを順調に収集した。6-8月にスウェーデン・ルンド大学およびデンマーク・コペンハーゲン大学で、H23,24年度に得られた標本試料のうち、不明種の同定を行った。年間を通したデータによる解析と考察を行い、その成果を日本森林学会大会で口頭発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
H25年4-11月にH23, 24年度と同じ調査地を用いて、キノコバエ類の採集・きのこ類の採集を行う。これらキノコバエ類・きのこ類・調査地の樹木種の同定を行う。既に取得済みの腐朽木量・樹木の本数・胸高断面積合計などのデータと合わせて、多変量解析を行い、キノコバエ類の群集構造に影響している要因の抽出を行う。本研究で得られた成果を基に、枯死木の増加と、それに伴うきのこ類の発生量・林分構造の変化が害虫種の個体群に及ぼす影響を評価し、きのこ栽培のハザードマップを作成する研究へ発展させる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H25年度の直接経費は900千円である。国内出張(38日)に400千円、補助員雇用に 320千円、消耗品購入に180千円を予定している。
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Research Products
(1 results)