2011 Fiscal Year Research-status Report
新規な金属複合炭素化プロセスにおけるガス化特性と固体生成物表面特性の解明
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23780178
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
浅田 隆志 福島大学, 共生システム理工学類, 准教授 (60434453)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 炭素化 / 金属複合 / 木質バイオマス / ガス化 / 炭素化物 |
Research Abstract |
金属複合炭素前駆体の炭素化において,塩化鉄および硫酸鉄を複合した際に,複合金属が炭素化に与える効果をガス化特性と固体生成物表面特性の両面から評価した。 ガス化特性については,塩化鉄複合した炭素前駆体の炭素化において,水素,一酸化炭素,メタン,二酸化炭素の発生量は鉄を複合しない場合とほとんど同じであった。一方,硫酸銅複合した炭素前駆体の炭素化においては,水素と一酸化炭素ガス発生量が減少する傾向が見られ,特に1000℃炭素化時は水素発生量が有意(p<0.05)に減少した。固体生成物を粉末X線回折(XRD)法で測定すると,Cu, Cu2O, CuOのピークが確認されたことから,硫酸銅の熱分解により酸化銅が形成され,炭素前駆体の炭素化に伴い発生した水素等の還元性ガスが酸化銅を還元してCu2OやCuが生成したと推測された。 固体生成物表面特性について,炭素前駆体に塩化鉄を複合した場合としない場合における固体生成物の細孔特性を比較すると,塩化鉄複合により1000℃固体生成物のBET比表面積,全細孔容積とミクロ孔容積は減少したが,メソ孔容積と平均細孔径は増加した。塩化鉄は炭素化時に細孔を拡大させる効果があると考えられる。また,硫酸銅についても,同様な効果が見られたが,1000℃炭素化時のBET比表面積等の低下は鉄に比べて小さく,またメソ孔の拡大も小さかった。硫酸銅を複合した炭素前駆体の600℃炭素化時は,BET比表面積,細孔容積,平均細孔径いずれも,銅複合のない場合とほとんど同じであった。走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた表面観察から,塩化鉄,硫酸銅共に炭素化温度が金属粒子径に影響を与えることが分かった。炭素化温度が高いほど金属粒子径が大きくなる傾向を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は金属複合炭素前駆体の炭素化において,複合金属が炭素化に与える効果をガス化特性と固体生成物表面特性の両面から明らかにすることである。平成23年度の計画では,鉄,銅化合物を用いて,金属溶液濃度,炭素化温度,炉内雰囲気等の製造条件がガス化効率や固体生成物表面特性に与える影響を評価することであった。 金属種の影響として塩化鉄と硫酸銅,金属濃度の影響として0.1と0.01 mol/L,炭素化温度の影響として600, 1000℃,炉内雰囲気の影響として窒素気流中と窒素流通無の条件で,炭素化時の水素,一酸化炭素,二酸化炭素,メタンのガス発生量測定によるガス化効率と窒素吸着量測定,XRD測定,SEM画像観察等による固体生成物表面特性の両面から評価し,多くの知見を得ることができた。 一方,金属複合炭素化がガス化特性に与える影響と固体生成物表面特性に与える影響の互いの関係について明らかでない部分がある。例えば,鉄や銅の金属複合炭素化は,1000℃では固体生成物の表面特性に与える影響として,メソ孔の拡大効果があったが,ガス化特性への影響は硫酸銅の場合におけるガス発生量を低下させる効果だけが観察された。硫酸銅複合炭素化時のガス発生量の低下は,酸化銅の還元に伴うものであることが,固体生成物表面特性としてXRD測定の結果から明らかになったが,メソ孔拡大のメカニズムについては,現状の実験結果だけでは明らかにできていない。平成24年度に実施する研究結果も合わせて本研究の目的を達成したい。
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Strategy for Future Research Activity |
金属複合炭素前駆体の炭素化において,複合金属が炭素化に与える効果をガス化特性と固体生成物表面特性の両面から明らかにすることを目的として,鉄や銅がガス化特性を変化させるメカニズムの解明,炭素化時に発生するガスが固体生成物の表面特性に与える効果のメカニズム解明のための研究を当初の予定通り進める。 ガス化特性や固体生成物表面特性に複合金属が与える影響のメカニズム解明のために,金属種と炭素前駆体の接触の有無の影響や炭素前駆体の代わりに,未処理のおが屑等を用いてガス化特性と固体生成物の表面特性を評価することにより実施する。 炭素前駆体と金属種を接触させない炭素化処理により,ガス化特性への金属種の影響が直接的か間接的かを判断できると考えられる。さらに,未処理おが屑の炭素化は,木材の主な構成成分であるセルロース,ヘミセルロース,リグニンの熱分解時に複合金属が存在するため,ガス化特性に与える影響が炭素前駆体の炭素化とは異なる。また,炭素前駆体の炭素化と比べ熱収縮が大きいことから,固体生成物表面特性への影響も異なると考えられ,金属複合炭素化時の各現象解明等に役立つ。また炭素化条件として窒素ガス流速の影響を評価し,金属種の触媒反応を解析しメカニズム解明を目指す。ガス流速の増加は,炉内雰囲気を変化させガス化により発生したガスと金属種の触媒反応を低下させるため,金属種のガス化特性への影響が直接的か間接的かを判断でき,金属複合炭素化時の各現象解明に役立つ。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は76,038円の未使用分があったが,震災の影響による1か月程度の研究開始の遅れから予算執行も遅れたためである。なお,研究目的の達成度はおおむね予定通りである。平成24年度中には,研究開始の遅れの影響は解消され,予定通り予算を執行する。 平成24年度の研究費は物品費として平成23年度未使用分76,038円を含め246,038円をガラス器具類,試薬,標準ガス等の研究遂行に必要な消耗品購入に,また研究成果発表のため炭素材料学会あるいは化学工学会等の国内学会への参加旅費,また外部研究者を招聘あるいは訪問し研究助言いただく際の旅費を合わせて170,000円,また,外部研究者から研究への助言をいただく際の謝金として60,000円,またその他の項目として,研究成果を英文誌に論文投稿する際に英文校閲料および論文投稿料等として100,000円使用する計画である。
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