2011 Fiscal Year Research-status Report
樹木の化学防御機構におけるオレウロペインの生物有機化学的研究
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23780181
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
大西 利幸 静岡大学, その他部局等, 特任助教(テニュアトラック) (60542165)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 植物 / 酵素 / 昆虫 / 農林水産物 / 生理活性 |
Research Abstract |
近年、モクセイ科やリンドウ科などの植物にのみ存在するイリドイド化合物は植物の生体防御化合物であると提唱されているが、未だ分子レベルでの解明はなされていない。本研究ではイリドイド化合物の一つであるオレウロペインを化学防御物質前駆体と考え、環境ストレス (本研究ではオリーブアナアキゾウムシの食害) に対する樹木の化学防御機構の解明を目的とした。オレウロペイン糖加水分解産物とタンパク質がシッフ塩基を形成して高分子架橋体を形成し、昆虫に対する栄養価の低下をもたらすことで植物化学防御機構の一役を担っていると推定されている。しかし、高分子架橋体形成機構について分子レベルでの解明はなされていない。そこで高分子架橋体の形成メカニズムを明らかにするために、まずオレウロペイン糖加水分解産物とアミノ酸を反応させ、その反応代謝物のLC-MSで分析し、HPLCにより分取し、NMRおよび高分解能MSによりその構造解析を試みた。LC-MSを用いた分子量解析の結果、オレウロペイン糖加水分解産物に1分子のアミノ酸が結合した化合物が生成されていることが示唆された。そこで、HPLCを用いてオレウロペイン糖加水分解産物-アミノ酸複合体を分取し、その構造決定を1H-NMR, 13C-NMR、二次元NMR (HMQC, HMBC) により行った。アミノ酸として20種類のL-アミノ酸を用いた。その結果、オレウロペイン糖加水分解産物 (OHM) とL-Lysのε-アミノ基が反応したOHM-Lys、OHM とL-Pheのα-アミノ基が反応したOHM-Pheの構造を同定した。両化合物とも含窒素六員環を有する新規化合物であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オレウロペイン糖加水分解産物 (OHM) とL-Lysのε-アミノ基が反応したOHM-Lys、OHM とL-Pheのα-アミノ基が反応したOHM-Pheの構造を同定することに成功し、タンパク質変性物質 (防御活性化物質) とタンパク質との高分子架橋変性体の形成メカニズムの一端を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、本課題の目標である防御活性化酵素または生合成酵素をオリーブより抽出・精製して、その酵素学的機能を明らかにする。また高分子架橋体の構造解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
オリーブ実からポリフェノールオキシダーゼやグルコシルトランスフェラーゼの精製を試みる。そのため酵素精製用生化学試薬の購入やLC-MS/MSによるペプチド解析試薬の購入を行う。第47回植物化学調節学会、日本農芸化学会2013年度大会に参加し、口頭発表を行うための旅費を執行する予定である。
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