2012 Fiscal Year Research-status Report
樹木の化学防御機構におけるオレウロペインの生物有機化学的研究
Project/Area Number |
23780181
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
大西 利幸 静岡大学, 若手グローバル研究リーダー育成拠点, 特任助教 (テニュアトラック) (60542165)
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Keywords | 植物 / 酵素 / 昆虫 / 生理活性 |
Research Abstract |
近年、モクセイ科やリンドウ科などの植物にのみ存在するイリドイド化合物は植物の生体防御化合物であると提唱されているが、未だ分子レベルでの解明はなされていない。本研究ではイリドイド配糖体の一つであるオレウロペインを化学防御物質前駆体と考え、環境ストレス (本研究ではオリーブアナアキゾウムシの食害) に対する樹木の化学防御機構の解明を目的とした。オレウロペイン糖加水分解産物とタンパク質がシッフ塩基を形成して高分子架橋体を形成し、昆虫に対する栄養価の低下をもたらすことで植物化学防御機構の一役を担っていると推定されている。シッフ塩基を有するオレウロペイン糖加水分解産物を植物体内で不活性化して安定的に貯蔵するためには配糖体化することが重要である。そこで我々はオリーブよりオレウロペイン生合成に関与する配糖体化酵素を同定することを目的に実験を行った。オリーブ葉より植物配糖体化遺伝子と高い相同性を有する複数の遺伝子をクローニングし、次に大腸菌発現系を用いてこれら遺伝子を発現した。また基質となるオレウロペイン生合成中間体を得るために、オリーブ葉より当該化合物の抽出および精製を行った。現在、大腸菌発現系で調製した異種発現酵素とオリーブ葉より抽出精製した化合物を基質を用いて、酵素活性試験を行い、LC-MS/MSを用いて酵素反応代謝物の構造解析を行っている。またオレウロペインの化学防御活性化の一端を担うポリフェノールオキシダーゼのクローニングを進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オリーブよりオレウロペイン生合成に関与する配糖体化酵素を10種以上クローニングすることに成功しており、化学防御活性化物質オレウロペインの生合成経路の解明に向け、着実に進んでいる。また本研究課題の項目である化学防御活性化酵素の一つであるポリフェノールオキシダーゼのクローニングも進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、本課題の目標である防御活性化酵素または生合成酵素の酵素学的解析をすすめ、オレウロペイン生合成および防御活性化機構を明らかにしていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
オリーブ実からポリフェノールオキシダーゼやグルコシルトランスフェラーゼの発現を試み、その酵素活性機構を明らかにする。そのため酵素発現用試薬の購入や酵素反応代謝物の構造解析のための分析試薬を購入する。第48回植物化学調節学会、日本農芸化学会2014年度大会に参加し、口頭発表を行うための旅費を執行する予定である。
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