2012 Fiscal Year Research-status Report
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23780186
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Research Institution | Miyazaki Prefectural Wood Utilization Research Center |
Principal Investigator |
中谷 誠 宮崎県木材利用技術センター, 構法開発部, 主任研究員 (90433143)
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Keywords | ラグスクリューボルト / ロングビス / 木質ラーメン構造 / モーメント抵抗接合部 / パネルゾーン / せん断補強 |
Research Abstract |
本年度は、『ラグスクリューボルトのクロス挿入接合法』の開発と性能評価実験、そして改良型としてラグスクリューボルトとロングビスを併用した接合形式の提案を行った。 既往の研究より、従来のラグスクリューボルトによる接合部では、ラグスクリューボルトにより挟まれた柱材(パネルゾーン)において、先行してせん断破壊を起こすケースが確認されている。そこで本研究では、ラグスクリューボルトを柱材内部においてクロス状になるように傾斜を付けて埋め込むことで、柱材のせん断補強効果とラグスクリューボルトの引き抜け変形能力の向上を期待する新たな接合形式の提案し、柱-梁接合部について性能評価実験を行った。その結果、ラグスクリューボルトの斜め埋め込みがパネルゾーンの補強に効果的であることを明らかにし、補強効果と変形性能を有する『ラグスクリューボルトのクロス挿入接合法』の可能性を示せた。しかし、ラグスクリューボルトの先穴を三次元的にあけるには高度な加工装置が必要となること、そしてラグスクリューボルトの力の流れが極めて複雑になることから、ロングビスを併用する改良型の提案を合わせて行った。改良型接合形式は、従来のラグスクリューボルト接合に併用して、パネルゾーンのせん断補強用に全長320mmのロングビスを斜め方向に先穴無しで埋め込み構成する。本年度は、曲げせん断型の試験方法を応用した簡易的な実験により、パネルゾーンのせん断補強効果について検討を行い、その補強効果を確認した。 これらの研究成果は、ニュージーランドのオークランドで開催された国際学会WCTE2012において「Development of Cross Embedded Joint Using Lagscrewbolt」として、また第63回日本木材学会大会において「木ネジによるモーメント抵抗接合部パネルゾーンのせん断補強効果の検討」として研究発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでに当初の実験計画通りに研究を進められており、同時に研究過程において明らかになった課題を解決する改良型の提案を行ったことから、当初の計画以上に研究は進展していると考える。 昨年度は、ラグスクリューボルトが木質材料の繊維方向に対して角度を持って埋め込まれた場合の引き抜き性能を実験により明らかにし、任意の角度に埋め込まれたラグスクリューボルトの引き抜き性能推定式を提案した。また、同時にラグスクリューボルトが木質材料を破壊させる要因のひとつであるネジ山の形状の考察を行い、新たなネジ山の提案を行った。本年度は、柱と梁の接合部についてラグスクリューボルトをクロス状に挿入した試験体について実験を実施し、本研究で提案している『ラグスクリューボルトのクロス挿入接合法』によるパネルゾーンのせん断補強効果を実験的に明らかにした。また同時に、斜めに埋め込まれたラグスクリューボルトの引き抜きに関する力の流れが複雑であること、そして先穴の加工に特殊機械が必要であることなどの課題が明らかになったことから、ラグスクリューボルトと併用してロングビスを斜め方向に埋め込み構成する改良型の接合方法を提案し、実験によりその補強効果を明らかにした。 これらの研究成果は、国際学会WCTE2012(World Conference of Timber Engineering 2012、ニュージーランド、オークランド市)および第63回日本木材学会大会(盛岡)において発表を行い、多くの研究者から貴重な意見をいただくことができた。 以上より,現在までに計画していた研究について、研究目的に沿う成果を得ていると考える。加えて、研究を通して明らかとなった課題を解決する新たな改良型の提案を行い、実験によりその有用性を明らかにした。このことから、当初の計画で想定していた以上の成果をあげていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までの研究が計画通り実施できていることから、来年度は当初の研究計画通りに実験および考察を実施し、「ラグスクリューボルトのクロス挿入接合法」の設計方法の提案につながる検討を行いたいと考えている。また、これまでの研究過程において提案した改良型の接合形式についても研究を継続し、最適化と実用化を意識した検討を行っていきたいと考えている。また、来年度は最終年度となるため、学会発表などを含めて対外的に研究成果を報告するように勤めていきたいと考えている。 本年度の柱と梁の接合部実験において、ラグスクリューボルトのクロス挿入接合法を開発し、モーメント抵抗接合部におけるパネルゾーンのせん断補強効果を確認した。来年度は、この接合形式により構成した木質ラーメン架構について水平せん断実験を実施し、架構としての性能を明らかにする。また、これまでの研究において提案した任意角度に埋め込まれたラグスクリューボルト1本当たりの引き抜き性能の推定式を用いて、外力モーメントに対する接合部全体の解析モデルの提案し、ラーメン架構全体の水平せん断性能を設計できる資料の整理を行いたい。そして、「ラグスクリューボルトのクロス挿入接合法」の設計と施工指針の提案につなげていきたいと考えている。また同時に、ラグスクリューボルトに併用してロングビスによりパネルゾーンのせん断補強を行う改良型接合形式について、実験を実施して最適で実用的な接合形式の検討を行う。予定している実験は、予備実験として簡易なせん断補強確認実験を実施して、ロングビスの挿入位置と本数による補強効果について施工性を含めて検討する。そして、柱と梁のモーメント抵抗接合部の実験を実施し、改良型の接合部のせん断補強効果の確認を行う。また、改良型接合部の設計法につながる解析モデルの提案を行いたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は、当初の研究計画の通り、①実験に使用する物品費、②国内外の学会やシンポジウムの参加に要する旅費、③学術雑誌の論文の投稿費用として使用する計画である。本年度の研究費において、次年度への繰り越しとなる研究費については、上記の研究費として次年度に使用する予定である。 実験に使用する物品費として、次年度はラグスクリューボルトのクロス挿入接合法で構成した実大ラーメン架構と、ロングビスを併用した改良型の接合部の実験を予定しており、木質部材として中断面集成材(断面:120x390 mm程度)、接合金物および接合具(LSBおよびロングビス)、そして実験用の治具の購入に研究費を使用する予定である。特に、接合金物および実験用治具に関しては、特殊形状の特注品になることが想定される。また、ロングビスについても一般流通品ではないものを購入する予定である。その他、実験の測定に必要となるひずみゲージなどの消耗品の購入も予定している。そして、本年度は研究の最終年度であることから、本研究で得られた成果を学会発表などにより対外的に発信するように勤めていきたいと考えており、そのための費用として研究費の使用を考えている。学会での研究成果の発信として、木質構造に関する研究発表が多く行われる日本木材学会での研究発表を予定している。学会での発表を通して、本研究の成果を発表すると同時に、多くの研究者から本研究に対する意見を伺いたいと考えている。また、専門誌の論文において研究成果の発信するための投稿費として使用したいと考えている。この他に、研究内容に関連するシンポジウムなどに参加して研究資料と情報の収集を行うための旅費として、また関連書物の購入費として使用していく予定である。
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Research Products
(2 results)