2012 Fiscal Year Research-status Report
マツ枯れの急激な樹体内水分消失に対する気孔および木部生細胞の反応特性の解明
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23780190
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
矢崎 健一 独立行政法人森林総合研究所, 植物生態研究領域, 主任研究員 (30353890)
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Keywords | マツノザイセンチュウ / 気孔 / 木部通水コンダクタンス / cryo-SEM / 木部柔細胞 |
Research Abstract |
マツ枯れの被害軽減技術開発のため、材線虫病の通水阻害進行メカニズムを解明する必要がある。本課題においては、マツ枯れ病罹病木の気孔の開き具合(コンダクタンス)、光合成速度および水分通道機能の経時変化を追跡し、同時に木部内水分挙動、生細胞の状態を同所的に解析することで、マツ枯れ特有のエンボリズム発生および枯死メカニズムを明らかにすることを目的とした。 H24度は、材線虫を地際部に接種した2年生クロマツ苗木を、十分潅水して生育させた(wet; W処理)処理と、水やりを控えて生育させ(dry; D処理)処理とで比較した。病徴としての葉の黄変はD処理区で早期にみられた。いずれの処理も、まず日中の気孔コンダクタンスや木部の通水コンダクタンスが低下し、次いで水ポテンシャルが低下、その後、葉が黄変した。木部通水コンダクタンスが低下するにつれ、水ポテンシャルが低下した。黄変直前の一年葉の光合成速度は、初期値に比べて、W, D処理とも低下していた。この低下はD処理で顕著だった。光およびCO2飽和状態での最大光合成速度およびVcmax25(25℃における最大炭酸固定速度)は水分条件に関わらず、接種木で低下した。病兆発生時の各光合成特性値と、通水コンダクタンス、水ポテンシャルといった水分特性値との相関は顕著ではなかった。 当年度の結果より、水ストレス状態で松枯れ病は進行しやすくなる一方、光合成の炭酸固定速度の変化は、気孔反応、木部部通水コンダクタンスや水ポテンシャルといった、樹体の水分特性と十分対応していない可能性があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
罹病木の生理特性の実験および解析は予定通り完了した。当初予定していなかった光合成特性の生理的な解析や実験処理を行ったことで、水分欠乏下における松枯れの進行過程における新たな知見が得られた。 木部通水コンダクタンスと木部内水分挙動との関連性、木部生細胞と水分挙動との関係の解析は少々遅れているが、観察データは得られており、研究の遂行に問題はない。
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Strategy for Future Research Activity |
H25度は、H24度に得られたサンプルの木部構造の微細構造の解析を進める。並行して乾燥が続いた際におけるクロマツの気孔反応、通水コンダクタンスの測定を行い、前年度得られた結果と比較する。 また、H24度に新たに得られた、水ストレスを経由しない光合成活性変化の原因の検証を行うため、接種試験を再度行い、より詳細なガス交換機能の解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験補助のための人件費を計上していたが、適した人材を雇用することが出来なかった。次年度においては、新たな知見を検証するため、クロロフィル蛍光による葉の光合成電子伝達系の解析、酸素電極法を用いた光合成速度の測定などを検証する予定である。また、木部内生細胞と水分挙動との対応において、DAPI染色による核の状態の観察のみでは細胞の生死を判定しきれないため、FDA染色を試みる。
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Research Products
(1 results)