2011 Fiscal Year Research-status Report
リンホシスチスウイルス感染による宿主細胞の肥大化機構の解明
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23780195
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
北村 真一 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 准教授 (40448379)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | リンホシスチスウイルス |
Research Abstract |
魚類リンホシスチス病の特徴は,リンホシスチス細胞(LCC)と呼ばれる直径1mm にもなる巨大細胞が罹患魚の体表に現れることである.これまでに,リンホシスチスウイルス(LCDV)に感染した宿主魚類の細胞が肥大化するメカニズムについては,全く分かっていない.そこで本課題では,まずLCDV に感染した魚類の遺伝子発現量変化を網羅的にマイクロアレイ実験で調べ,どのような過程でLCCが形成されているのか,その概要を明らかにする.ヒラメ(体重約1.0g)を60尾ずつ2区準備し,実験区にはLCC磨砕液,対照区には磨砕に用いた培地を暴露した.感染後0,1,3,7,14,21,28,42および56日目(dpi)にそれぞれの区から5個体ずつ実験魚をサンプリングした.ウイルス量は,リアルタイムPCRで相対定量した.ヒラメの遺伝子発現量変化は,マイクロアレイ実験で調べた.21dpiから発症個体が観察され,発症率は経時的に増加し,60dpiには92.9%に増加した.ウイルスは14dpiに初めて検出され,28dpiから42dpiの間に260倍に急増した.このことから,LCDVは感染後,約2週間の潜伏期を有する遅発性ウイルスであり,ウイルス量が十分なものとなった後にLCCs形成を誘発することが明らかとなった.マイクロアレイ実験の結果から,28dpiまでは,ほとんどの遺伝子で発現量変化は認められなかった.しかしながら,ウイルスが盛んに複製していた42dpiでは,900個以上の遺伝子において発現量変化が観察された.これらのほとんどは発現が抑制されており,特にアポトーシス誘導および細胞周期調節に関連する遺伝子群の発現が抑制されていた.本研究で得られた遺伝子発現変化は,DNA腫瘍ウイルスに感染した宿主のものと酷似していたことから,LCCs形成は腫瘍形成と類似した機構によるものと考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成23年度に予定したヒラメに対するリンホシスチスウイルスの感染実験,魚体内中のウイルス力価測定およびマイクロアレイ実験は全て消化できた.順調に研究が進んでいる理由の一つとして,研究協力者の手厚い補助が挙げられる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の研究が順調に進んでいることから,平成24年度も当初の計画通り,修士課程の研究協力者とともにウイルス遺伝子の機能解析を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度には,平成23年度のマイクロアレイ実験で得られた結果に基づき,細胞の肥大化に関与する遺伝子を明らかにする.備品の購入予定はなく,当初の計画通り,分子生物学用試薬や旅費を中心に研究費を使用する.
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