2012 Fiscal Year Annual Research Report
クロマグロ仔稚魚の滞在深度と逃避反応行動に関する研究
Project/Area Number |
23780205
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Research Institution | Fisheries Research Agency |
Principal Investigator |
福田 漠生 独立行政法人水産総合研究センター, 国際水産資源研究所, 研究員 (50581063)
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Keywords | クロマグロ / 仔稚魚期 / 鉛直行動 / 遊泳力 / 成長 / 遊泳モデル / 明暗環境 / 魚群行動 |
Research Abstract |
本研究課題は,行動情報に乏しい太平洋クロマグロ仔稚魚を対象に,遊泳力や,滞在深度を調節しようとする行動,および構造物に対する反応行動の発達過程を個体発生に従って明らかにする。 クロマグロ仔魚については,これまでの研究で成長に伴って体密度が増加すること,鰾が孵化後3日前後で発生すること,鰾は夜間に膨張し日中は収縮していることなどが明らかにされたが,これらの個体発生のイベントが行動にどう影響するのかは明らかではなかった。 平成24年度の研究は,高精度な三次元行動観察システムで仔魚の行動を個体識別しながら観察し,外部形態の計測も行うことにより,成長や外部形態の発達,光環境が仔魚の行動に与える影響を定量評価することを可能にした。結果から①仔魚が孵化後3日から明環境下では積極的に遊泳するが,暗環境下では明環境下よりも遅く泳ぐこと,②夜間の体密度は鰾の膨張によって減少するものの,海水よりは大きく,仔魚はわずかでも遊泳することで自重を支持する必要があること,③3日齢を過ぎても鰾が発生しない個体は水槽底部に沈降しやすいこと,④鰾の発生個体と未発生個体で,魚体の浮心と重心の位置関係が異なることが沈降しやすい原因である可能性があること,が示された。 本課題全体で得られた成果は以下のようにまとめられる。仔魚から稚魚期にかけてのクロマグロの行動の発達過程をビデオ観察・解析し,魚体の外部形態的特徴と照らし合わせることで,仔稚魚期の遊泳開始のタイミング,遊泳力や旋回運動能力の発達過程,行動に与える光環境の影響,鰾の役割が明らかになった。また,得られた行動情報を元にした数理モデルによる解析によって,行動に与える構造物の影響の強さが成長段階ごとに明らかになった。これらの情報は,本種仔稚魚養成に有益であるほか,実海域で孵化した仔魚がどのように輸送されるのかを検討する上でも有益な情報となる。
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