2012 Fiscal Year Research-status Report
底棲魚介類の初期減耗要因の解明:再生産期の異なる種の比較によるアプローチ
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23780206
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
児玉 圭太 独立行政法人国立環境研究所, 環境リスク研究センター, 研究員 (90391101)
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Keywords | 貧酸素水塊 / 再生産 / 初期生活史 / 東京湾 / 個体数変動 |
Research Abstract |
東京湾においてシャコ幼生および稚シャコの棲息環境中における生活史特性および初期減耗要因を解明するため、生物試料採集および環境調査を毎月1回実施した。前年の調査結果から予測されたとおり、2012年の親資源量および幼生発生量は低水準であった。浮遊幼生期を終えた当歳の稚シャコは内湾部広域に出現したが、個体数密度は前年とほぼ同水準であり、2013年においても産卵に寄与する親資源量の増加は見込めない状況と推察された。 生活史初期の生残率に関与する要因を解明するための研究の一環として、シャコ幼生の餌生物推定手法の開発を行っている。前年度から継続して、ホスト生物の遺伝子を選択的に除外し餌生物のDNAのみを増幅する手法であるPNA-directed PCR clampingの適用可能性の検討を進めた。18S rDNAを解析対象とすることの妥当性を評価するため、幼生の餌として想定される複数の生物分類群の塩基配列をweb上の塩基配列データベースより取得し、多重配列アラインメントを作成した。これにより18S rDNA内において、シャコを含む全ての種を増幅できる部位、およびその部位の中においてシャコに特異的な配列を明らかにし、その配列情報に基づいてユニバーサルプライマーとPNAを設計した。ユニバーサルプライマーにより複数の生物種の18S rDNAを増幅できることを確認した。一方、PNAによるシャコ18S rDNAの増幅阻害については、シャコDNAの濃度が高い場合、およびユニバーサルプライマーとPNAの設計部位の距離が大きい場合に増幅阻害の失敗が認められた。現在、この問題を解決するための方法について検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
貧酸素水塊が稚シャコの密度と空間分布に影響することを示唆する結果が得られた。この成果について、平成25年度に国際学会で口頭発表を行い、論文投稿する予定である。 シャコ幼生の貧酸素耐性を明らかにするための、実験装置の作製を行い、安定的に低DO濃度を設定可能な実験系を確立した。また、飼育下において卵孵化に成功し、幼生の貧酸素曝露試験を試行的に実施し、幼生の貧酸素耐性についての予備的知見を獲得した。 シャコの生活史初期における餌料生物の推定手法の開発については、18S rDNAを解析対象遺伝子と設定し、複数の生物分類群の18S rDNAを増幅するためのユニバーサルプライマーを作製した。また、シャコを特異的に識別できるPNAプローブを試行的に作製し、シャコ18S rDNAの増幅阻害条件について予備的知見を獲得した。
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Strategy for Future Research Activity |
・ シャコの幼仔稚の生活史特性と初期減耗要因を解明するため、東京湾において生物・環境調査を行う。シャコ幼稚個体を9~12 月の期間に毎月採集する。その他の動物プランクトンも採集する。CTD-DO ロガーにより水温、塩分、DO 濃度を測定する。 ・後期発達段階幼生および稚シャコの貧酸素耐性について飼育試験を実施し、大量斃死が生じる溶存酸素濃度を明らかにする。 ・分子生物学の手法を応用し、シャコの幼若個体の餌生物種を定性的に把握する方法を確立する。18S rDNAを解析対象として、ホスト生物の遺伝子を選択的に除外できるPNA-directed PCR clampingを行う。得られた増幅産物をクローニングし、複数のコロニーについて塩基配列を決定する。Web 遺伝子データベースを用いて相同性検索を行い、分類群レベルで餌生物の推定を行う。以上により、シャコの生活史初期における食性を明らかにする。また、浮遊幼生期から着底までの生残率の異なる年について食性の比較を行い、餌料環境が加入の成否に及ぼす影響についても検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
野外調査と飼育実験の実施に必要な消耗品を購入する。生物試料を処理、測定するための消耗品と試薬を購入する。幼生食性解析のためにペプチド核酸を購入する。また、塩基配列シーケンシングを外注し、その解析費用を支出する。野外採集調査に係る傭船料は、千葉県水産総合研究センターと分担するため、4ヶ月分を支出する。野外採集調査および飼育実験の実施に係る研究打合せを行うための旅費を支出する。得られた研究成果を国内外の学会において発表するため、学会参加費と旅費を支出する。学術論文の投稿に際し、原稿の英文校閲を行う。また、受理された論文については別刷を購入する。
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Research Products
(11 results)
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[Presentation] Surveys on environmental pollution and possible adverse effects by radionuclides in wildlife, after severe accidents of Fukushima Dai-ichi Nuclear Power Plants, Japan2012
Author(s)
Horiguchi T, Kodama K, Ihara S, Takase M, Ohta , Yoshii H, Mizuno S, Kamiyama K, Maki H, Tanaka A, Karube S, Shiraishi H, Ohara T
Organizer
The 5th Bilateral Seminar Italy-Japan Physical and Chemical Impacts on Marine Organisms: For the Sustainable Quality of Human Society Development on Marine Environment
Place of Presentation
Consiglio Nazionale delle Ricerche, Area della Ricerca di Palermo (Italy)
Year and Date
20121127-20121128
Invited
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