2012 Fiscal Year Research-status Report
食品表示における費用便益分析と制度設計に関する実証的研究
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23780220
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
氏家 清和 筑波大学, 生命環境系, 助教 (30401714)
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Keywords | 食品安全性 / 放射性物質汚染 / 消費者行動 / 風評被害 |
Research Abstract |
本年度は,昨今の重要な課題である放射性物質による農産物汚染を事例として,昨年度に引き続き調査をおこない,昨年度に構築した計測モデルを踏まえて消費者評価の分析を継続した。 具体的には,震災とそれに伴う原発事故が起こった2011年3月から,事故からほぼ約1年が経過した2012年2月まで,5回にわたり行われた消費者調査に基づき,福島県産と茨城県産のほうれん草ならびに牛乳を分析対象として,WTA関数をinterval regressionにより推定し,これらの農産物に対する消費者評価を,放射性物質による汚染に伴う健康リスクに対する評価(以下,リスク評価)と,実際の汚染程度とはあまり関係がない,産地に対する評価(以下,産地評価)とに分解して分析した。 分析の結果,まず,京浜地域と京阪神地域で,消費者評価の様相が大きく異なっていることが分かった。リスク評価には地域差がほとんどないが,産地評価は京阪神地域の方が悪かった。また,6月から7月の間に,リスク評価に何らかの構造変化が起こった可能性を指摘した。原因としては,7月に発覚した牛肉汚染が考えられた。産地評価とリスク評価の挙動は大きく異なっており,これらを分解して捉えた本稿のアプローチは有効だったといえるだろう。汚染による健康リスクを評価した結果買い控えるという合理性が消費者行動の中に存在していることを指摘し,消費者の買い控え行動による経済的被害を一括して風評被害としてしまうことの問題点を提示した。 また,以上のような知見について,海外の研究者と意見交換を行い,有意義なディスカッションを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の成果により,放射性物質汚染に対してどのような情報提供が望ましいのか,一定の知見が得られつつある。また,新聞等でも一部報道されることもあり,社会に還元できていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き調査を行い,消費者評価の推移を見つつ,評価の決定要因がどのような理由によるのか分析を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は比較的少額ではあるが,来年度の研究費と合算し,調査費の一部として活用する。
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