2013 Fiscal Year Research-status Report
食品表示における費用便益分析と制度設計に関する実証的研究
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23780220
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
氏家 清和 筑波大学, 生命環境系, 助教 (30401714)
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Keywords | 食品安全性 / 放射性物質汚染 / 消費者行動 / 風評被害 / 食品表示 |
Research Abstract |
本年度は,昨年度に引き続き,農産物の放射性物質汚染に対する消費者評価を調査した.その推移を分析した.評価分析モデルを利用し,消費者評価を産地に対する評価と汚染による健康リスクへの評価に分離して計測した.事故から3年経過した段階でも,原発周辺地域産の農産物に対する消費者の忌避感は十分には解消されていない.ただし,京浜地域においては,産地評価については福島県産ならびに周辺県とも改善傾向がみられ,特に。周辺県においては,産地評価部分はほぼ原発事故以前に戻ったと見られる.ただし、福島県産の改善傾向は緩慢であり,現在でも産地に対する忌避感が継続していた。一方,京阪神地域においては,福島県産と周辺県産の産地評価が同様の動きをしており,両産地が同一視される傾向が強いことが分かった。さらに,汚染水準とWTAとの関係性についても検討した。その結果,汚染水準―WTA曲線の形状は,原点に対して凹形の構造を持っていることを指摘した。すなわち汚染の水準が低い場合には水準の変化により消費者評価が大きく変化するが,水準が高い場合には,消費者評価は変化しにくいと考えられる。2012年4月に行われた放射性物質汚染に関する安全基準の改定により,汚染が基準値以下である農産物に対する評価は一定程度改善されたものの,それは,それまでの汚染水準―WTA曲線に沿った変化であると解釈することができ,消費者のWTAを大幅に低下させるには至っていないことを指摘した。 これらの知見を,学会誌に報告したほか,新聞へのコメントや研究代表者のウェブページなどで社会に広く公開した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
食品安全性に関する表示制度に対するニーズについて,その大きさと変化のありようを定量的に分析し,その結果を社会に広く公開できている.
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Strategy for Future Research Activity |
同様の形式で継続的に調査を行い,食品安全をめぐる事件に対する消費者評価の推移を長期的に追うことが重要な課題だと考えている.あわせて,緊急時において,どのような情報提供が必要なのか,検討を加える.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
他の研究費を活用し,本研究費での調査は1回に抑えることができたため. 本年度2回調査を行う予定であり,その調査のための旅費等に使用する計画である.
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