2013 Fiscal Year Research-status Report
リレーションシップバンキングを基軸とした農業金融の新手法と金融機関連携の研究
Project/Area Number |
23780229
|
Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
森 佳子 島根大学, 生物資源科学部, 准教授 (40346375)
|
Keywords | 農業金融 / リレーションシップバンキング / 金融機関連携 / 貸出手法 |
Research Abstract |
本研究は,多様な農業経営主体の組織的,機能的特質,農業の産業的特質を十分考慮し,理論・実証分析を通じて,リレーションシップバンキングを基軸とした農業金融の新しい手法とそれを実現するための金融機関(公庫、農協、民間金融機関)の連携を構築することを目的としており,本研究では,具体的に以下の3点に取り組む.1)多様な農業経営主体の資金需要に対応できる金融手法を,小企業金融の分野で用いられている新しい金融技術の農業金融への適用可能性を検討した上で,提示する.2)農協以外の民間金融機関が積極的に行ってきている農業融資以外の農業者への支援の実態と課題を整理し,民間金融機関による農業者への支援のあり方を提示する.3)多様な金融機関(公庫、農協、民間金融機関)の構造的・機能的特質をふまえ,新しい金融技術に対応した、望ましい連携のあり方を検討する. 研究代表者は,これまで農業経営の経営発展と財務行動に関する研究に取り組んできたが,新たに中小企業金融論に依拠することによって,本研究ではミクロ的な視点から金融機関と経営主体の取引関係や多様な経営主体の財務行動等,新しい資金需要者・供給者の 取引関係や,組織構造,行動論理を分析・解明することが可能となる.本研究で得られる成果は,農業金融論だけでなく,農業経営学の発展に寄与するのと同時に,多様な農業の担い手を育成し支援していくという,我が国の農業政策課題の解決に資する.平成25年度 は,計画通り,農協以外の民間金融機関による,企業的農業経営に対する多様な貸出手法を理論的に整理し,その成果を『月刊金融ジャーナル』2014年1月号に執筆した.また,これらの成果を「農業金融における貸出手法と企業的経営の会計情報の整備・支援」として著書の分担執筆としても論文にとりまとめた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度および昨年度の計画は,以下の4点であった.1)農業経営学、農業金融論、中小企業金融論に依拠しながら、農業金融における新たな手法や体制整備の課題を明らかにした上で、リレーションシップバンキングを基軸とした、多様な農業経営主体に対する農業金融手法を確立するための理論枠組みを提示する,2)農協以外の民間金融機関が積極的に行ってきている、農業融資以外の農業者への支援の実態と課題を整理し、申請者が既に日本農業経営学会で個別報告した内容(地域金融機関によるビジネスマッチングの意義と課題)をふまえ、民間金融機関による農業者への支援のあり方を提示する.3) 多様な金融機関(公庫、農協、民間金融機関)の構造的・機能的特質をふまえ、新しい金融技術に対応した、金融機関の望ましい連携のあり方を提示する.4)初年度の研究成果を取りまとめ、学会等で発表し論文として取りまとめる。 このうち,1),3),4)に関しては,実行できている.なお,3)に関しては,民間金融機関に対するヒアリング調査及び資料収集は行っており,とりまとめに関して,今後行っていく計画である.さらに,企業的農業経営約1000件に対し民間金融機関との資金取引に関するアンケート調査の設計を行った.26年度以降はこのアンケート調査の実施および結果をとりまとめ,学会や学術論文等で発表していく.
|
Strategy for Future Research Activity |
1)前年度の研究成果に基づき農業経営及び金融機関・関係諸機関の実態調査を、予備調査・本調査を通じ、下記の各道府県で行う。申請者は既に(社)中央畜産会、県JA中央会、農業改良普及センター、公庫の協力を得て、岩手や鹿児島を始めとする8府県への農業経営及び関係諸機関の実態調査を行っており、本申請課題を遂行するために必要となる実態調査をスムーズに行う準備が整っている。なお、本研究は、金融機関と農業経営主体との取引の中でもリレーションシップバンキングに注目しており、地域の経済特性、農業生産構造にも留意した広範囲にわたる定性的、定量的なデータ収集が必要不可欠である。さらに、現在、農業金融を取り巻く環境は変化が激しく、動向を見極める必要もある。以上のことから、本研究では4年間の研究計画とし、できる限り調査地も多く設定するようにした。 2)肉事業協同組合の協力のもと,企業的農業経営に対して,金融環境に関するアンケート調査を実施しており,この結果に基づく実証分析も行っていく計画である. 3)前年度で提示した理論的枠組み、実態調査に基づき、計量的実証分析・定性的実証分析の両側面から、リレーションシップバンキングを基軸とした農業金融の新手法を提示し金融機関連携システムを構築する。 4) 研究成果を取りまとめ、学会等で発表し論文として取りまとめる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定していた学会報告を行わなかったこと。 帝国データバンクから予定としていた農業経営の財務データおよび経営データの購入を次年度購入に変更したこと。 研究計画の遂行に加えて、帝国データバンクから農業経営の財務データおよび経営データの購入、研究成果の学会報告および論文執筆に伴う費用にあてる。
|
Research Products
(2 results)