2011 Fiscal Year Research-status Report
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23780232
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
森高 正博 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (20423585)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 青果物流通 / 契約取引 / 卸売市場 / 繰り返しゲーム / AHP |
Research Abstract |
平成23年度は、調査のためのAHPの階層構造の修正と調査様式の改善を行った。得られる数値データの精度が分析の成否を大きく左右するため、この点に時間を費やした。まず、取引当事者からのヒアリングと、文献等調査を通して、取引チャネルの評価を行うための利得の階層構造を特定した。最上位の階層には、価格、数量、品質、取引費用を用意し、当初最上位の階層の1つとして想定していた態度については、それぞれ、最上位の階層の下の要素として修正した。また、AHPの予備調査の結果、以下の点で調査時点での回答者の回答にゆらぎが生じるため、回答結果の信頼性が低下することが明らかとなり、その対処として調査票及び調査方法の修正を試みた。(1)取引先類型についての混乱の排除:ある流通主体にとって同じ品目の取引先は複数に分かれており、それぞれの取引先には、異なる目的がある。そのため、複数の取引先のポートフォリオを構成して、取引全体がうまくいくように設計されていることが多い。つまり同じ品目でも、取引先によってリスクを取って良い取引先とリスクを取ってはいけない取引先が混在する。こうした状態を看過してヒアリングを行うと、回答者が類型間の違うものを回答中に比較して回答を提示する問題が生じる。そのため、1つの類型に限定して代替案を用意し、その類型に関する質問が行われることを回答者にもはっきりと認識させるよう、事前の質問を準備した。(2)一対比較への回答者の不慣れについての対処:取引先別の評価は絶対評価法を採用し、回答者が代替案について具体的なイメージが得られるようにした。(3)評価基準の重みづけにおける揺らぎへの対処:取引先類型に対して望むものを一対比較する旨を明記した。また、一対比較を下位の階層から進めることで、上位階層の回答時に、下位階層の解析結果を標記し、回答のゆらぎを低下させることとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度は、AHPの予備調査において、複数の問題点が発生しやすいことが分かり、質問票と質問方法に関する対応を行った。そのためAHPの本調査の実施に至らなかった。ただし、この問題は、分析に供するデータセットの信頼性に関わって、研究の成否を大きく左右するものであるため、時間をかけて対処する必要のある問題である。その意味では、取引当事者の認識と、回答時の思考の流れについて、問題を早い段階で確認できたことは、その後の本調査と分析をスムーズに進めるためには良かったと考えられる。 平成23年度に予定していたAHPの本調査は平成24年度にずれ込むことになったが、研究の進捗を大きく遅らせるものではないため、「(3)やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、昨年度の調査残と当初から本年度に予定していた分析を以下の手順で実施する。(1)AHPの本調査: 平成23年度に実施要諦であった調査の内、AHPの本調査について、平成24年度の前期に実施する。質問票と質問方法について実施上の問題は昨年度で解決しているため、進捗に大きな問題は発生しないと考える。(2)AHPの解析: 1で得られたデータセットについて、AHPの解析を行う。(3)契約取引の繰り返しゲームの分析: 平成24年度後期では、2で得られた結果を利用して、契約取引の繰り返しゲームのモデル化を行う。そして対象事例における現状の契約取引がどの程度継続性や安定性を持っているのか数値解析を行う。また、市場変動等と取引態度に起因したチャネル評価の変化が継続性・安定性にどのような影響を及ぼすのか、感度分析によって明らかにする。(4)分析結果と解釈の妥当性についての追加ヒアリング: 分析結果の妥当性検討のため、再度、対象事例を訪問し、結果の説明とそれに対する売買担当者の見解についてのヒアリングを行う。ここで指摘された内容によって、適宜、分析の修正を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の執行残が発生しており、この理由は次の通りである。AHPの予備調査において、複数の問題点が発生しやすいことが分かり、質問票と質問方法に関する対応を行わなければならなかった。そのためAHPの本調査の実施に至らなかった。 平成23年度の執行残については、まず、AHPの本調査のための旅費として25千円、調査に伴う謝金として7千円を充てる。なお、本調査の内2回は、申請者の他に、AHPプログラムの技術的な操作を行う補助員を1名伴って実施する。 次いで、平成24年度の当初からの予算執行計画に準じて、追加ヒアリングのための旅費等として35千円を、また、調査に伴う謝金として7千円を充てる。その他、物品費、その他の費目に合計8千円を充てる。
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