2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23780232
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
森高 正博 九州大学, 農学研究院, 助教 (20423585)
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Keywords | 青果物契約取引 / ゲーム理論 / D-AHP / 契約の安定性 |
Research Abstract |
本研究は,産地と小売業者等で行われる青果物契約取引について,経済的評価する枠組みづくりを目指した.具体的には,取引主体間の契約継続・解消に関する戦略形ゲームについて,その利得を項目別評価の加重和としてAHPを用いて数値化し,項目ごとの評価の変化が利得および行動に及ぼす影響を分析した. 初年度は予備調査を通してモデルの改善を行った.代替的な取引先それぞれから得られる利得は,その収益の確実同値額として表し,大きくは収益部分の評価および収益の分散に対する評価に分解して,AHPの階層構造を構成した.ただし,後者の項目については,そのままでは評価値が負の値をとるため,収益の安定性にお読みかえて,評価値が正の値をとるよう修正した.また,効用関数としての性質を維持するためD-AHPを採用した.以上より,契約取引事例について,戦略形ゲームとD-AHPを用いた契約の安定性に関する分析枠組みを構築した. 最終年度は,青果物の契約取引を行う生産サイドと小売サイド,計4組の取引について,D-AHPでの計測を行った.いずれの事例も事前契約取引(価格,あるいは価格と数量の大枠が播種前に決定)が行われており,品種や栽培方法などの指定を伴っている.計測の結果,事業ポートフォリオにおける当該取引の位置付けによって,リスク回避度は大きく異なっていた.このことは,取引主体が安定的な取引を望むか,あるいは収益性を重視した取引を望むかの違いであり,従って,取引の解消・不安定性に繋がる要因も事例によって異なる結果となった.また,不作・豊作,市況変動に直面した際の,数量・価格の調整・再交渉について,事例ごとで適切な対処方法が異なることが示された.以上の結果は,取引交渉においてマッチングした当事者間の選好に対する相互理解,そして生産の不安定性がある中でマッチングに応じて再交渉手段を定めることの重要性を示唆している.
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