2011 Fiscal Year Research-status Report
カンボジア貧困農村における子供の健康・栄養の改善および平準化に関する実証分析
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23780235
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Research Institution | Kushiro Public University of Economics |
Principal Investigator |
三輪 加奈 釧路公立大学, 経済学部, 講師 (00552001)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | カンボジア / 子供の健康・栄養 / ショック / インフォーマル・リスク・プーリング / 農村貧困 |
Research Abstract |
本研究の目的は、開発途上国のひとつであるカンボジアの、特に貧困問題が深刻な農村部における、子供の健康・栄養状態および成長に焦点をあて、それらの決定因を実証分析と地域研究的な手法を用いて明らかにすることである。特に、本研究では「村落の特性とその差異が子供の健康・栄養状態に与える影響」と「家計レベルおよび広範レベルでのショックの子供の成長への影響」、「インフォーマルなリスク・プーリング制度の子供の栄養状態(成長)への効果」の3点に着目する。 初年度である平成23年度は、上記に関する先行研究のレビューと実証分析の際の推計方法などに関する文献研究とともに、カンボジアのコンポンスプー州およびタケオ州の4村落において、家計聞き取り調査を実施し、実証分析に必要なデータを収集した。調査の内容は、家計調査(家族構成・教育・経済生産活動・資産保有状況など)に加え、子供とその親の健康・栄養状態の計測(身長・体重の計測)、家計(家計構成員)が直面した不測のショックについての情報とそれへの対処方法(インフォーマルなリスク・プーリング制度)などについての詳細な聞き取りであった。 調査の結果、カンボジアの調査村落における子供の栄養状態について、栄養不良の子供の割合が約5割となっており、村落間でも差はあるものの、カンボジア農村において子供の栄養不良はいまだ深刻な問題であることが示唆される。また、家計が直面した予期せぬショックとしては、家計構成員の病気・ケガ、農作物被害(不作)などが多くみられ、それらのショックへの対処方法には、家計間での贈与交換やインフォーマル信用(無利子融資)の貸借などが利用可能であるという情報が得られた。 これらの情報は、既存の統計資料からでは十分でないことからも、カンボジア農村部での調査により独自にデータを収集したことの意義は大きく、また今後の分析研究にとって有用なものといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実施計画」において、平成23年度は、研究目的・課題に関する先行研究のレビューと実証分析の際の推計方法や地域研究の手法に関する文献研究、およびカンボジア農村部での実地調査を主な内容としていた。これらいずれについても、当初の計画通りに進めることができたため、「おおむね順調に進展している」と判断する。 しかし、その具体的内容については、若干の変更があった。当初、平成23年度には、「村落の特性とその差異が、子供の健康・栄養状態に与える影響」を主に考察することを目的とした研究計画であったもの、実際には、これまでの研究代表者の研究との兼ね合いから、「不測のショックが子供の健康・栄養(成長)に与える影響」と「インフォーマルなリスク・プーリングがもたらす効果」により重点を置いた内容となった。なお、この点について、「村落の特性とその差異」に関しては、平成24年度での研究・調査において取り組むことで、本研究全体の「研究の目的」の達成については大きな問題は生じないものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、カンボジア農村部での実地調査により収集したデータを用いた分析研究を進めていく。はじめに、平成23年度の家計聞き取り調査での調査内容を考慮し、「子供の健康・栄養(成長)へのショックの影響とインフォーマルなリスク・シェアリング制度の効果」を実証分析などにより検証する。そのうえで、研究成果の学会大会での報告や(国内外の学術雑誌への投稿を見据えた)論文作成を行い、情報提供や研究交流の機会をもつこととする。 併せて、平成24年度には、平成23年度の調査では十分な聞き取りを行えなかった、「村落の特性(村落の住民の親族関係や人間関係としての社会的ネットワーク(social network)や、村落の開発・発展において重要な役割を果たす村長や村落開発委員会のリーダーシップなど)」についても、カンボジア農村において聞き取り調査を実施する。また、そこから得られた情報(データ)を用いて、村落の特性とその差異と子供の健康・栄養状態との関係性について詳しく検証していく。 なお、村落の特性などはより多くの村落で調査を行いその差異や、子供の健康・栄養などへの影響を検証することが望ましいと考えられるため、平成24年度の実地調査では、平成23年度と同一の村落・家計への調査に加え、可能な限り他の数村落(各村落で約30世帯ずつ)での調査も実施することを考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度においても、カンボジア農村において家計聞き取り調査を実施し、今後の分析研究に必要なさらなるデータの収集を予定している。そのため、カンボジアへの渡航費(釧路―カンボジア)を外国旅費として使用する。また、調査補助員の雇用による日当を謝金として、調査地と滞在先の移動手段としてレンタカー料や調査票の印刷費などをその他経費とする。 さらに、平成23年度の調査で収集されたデータを用いた分析研究を進め、研究経過とその時点での成果を関連する学会(日本農業経済学会あるいは地域農林経済学会)において報告し、情報提供および研究交流の機会をもつため、平成24年度は、国内の学会大会への参加旅費を国内旅費として計上する。 その他、研究に必要な文献(図書・雑誌・論文など)や消耗品(プリンタ・トナー、PPC用紙など)を、必要に応じて適宜購入する。
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