2012 Fiscal Year Research-status Report
カンボジア貧困農村における子供の健康・栄養の改善および平準化に関する実証分析
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23780235
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Research Institution | Kushiro Public University of Economics |
Principal Investigator |
三輪 加奈 釧路公立大学, 経済学部, 講師 (00552001)
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Keywords | カンボジア / 子供の健康・栄養 / ショック / インフォーマル・リスク・プーリング / 農村貧困 |
Research Abstract |
本研究の目的は、開発途上国のひとつであるカンボジアの、特に貧困問題が深刻な農村部における、子供の健康・栄養状態および成長に焦点をあて、それらの決定因を実証分析と地域研究的な手法を用いて明らかにすることである。特に本研究では、「村落の特性とその差異が子供の健康・栄養状態に与える影響」と「家計レベルおよび広範レベルでのショックの子供の成長への影響」、「インフォーマルなリスク・プーリング制度の子供の栄養状態(成長)への効果」の3点に着目する。 2年目である平成24年度は、上記の特に村落の特性としての人間関係などの社会的ネットワーク(social network)やリーダーシップなどに関する先行研究のレビューと、実証分析の際の推計方法などに関する文献研究とともに、カンボジアのコンポンスプー州およびタケオ州の12村落において、合計500世帯に対して家計聞き取り調査を実施し、実証分析に必要なデータを収集した。調査の内容は、家計調査(家族構成・教育・経済生産活動・資産保有状況など)に加え、子供とその親の健康・栄養状態の計測(身長・体重の計測)、家計(家計構成員)が直面した不測のショックについての情報とそれへの対処方法(インフォーマルなリスク・プーリング制度)などについての詳細な聞き取りであった。また、村落の特性(村落の住民の親族関係や人間関係としての社会的ネットワークと家計が属している農業・貯蓄グループとそのリーダーなど)についての聞き取りも実施した。 収集されたデータから得られる情報は、既存の統計資料からでは十分でないことからも、カンボジア農村部での調査により独自にデータを収集したことの意義は大きく、また今後の分析研究にとって有用なものといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実施計画」において、平成24年度は、研究目的・課題に関する先行研究のレビューと実証分析の際の推計方法や地域研究の手法に関する文献研究、およびカンボジア農村部での実地調査を主な内容としていた。これらいずれについても、当初の計画通りに進めることができたため、「おおむね順調に進展している」と判断する。 なお、当初は平成24年度のカンボジアでの実地調査は1回としていたが、村落の特性などは、より多くの村落で調査を行いその差異や子供の健康・栄養などへの影響を検証することが望ましいと考え、前倒し支払請求を行うとともに追加の実地調査を実施した。これにより、2回の調査で併せて12村落、500世帯に対して聞き取りを行うことができた。これらの収集された資料・データにより、より多くの情報を用いて分析研究を行えるようになると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、平成23・24年度のカンボジア家計調査により収集した資料・データをプールし、それを用いて、子供の健康・栄養状態および成長の決定因に関する実証分析を中心に進めることが課題となる。村落の特性やインフォーマル・リスク・プーリング制度の効果などについては、合理的経済性では説明できないものも含まれていると予想されることから、行動経済学的な視点から理論仮説を立て分析する。 これらの分析過程で、補足的な調査を実施しなければならない可能性も当初考えられたが、これまでの調査ですでに有用なデータが得られ、また平成24年度の追加的調査でも同レベルのデータを収集できたと考えることから、その必要性は低いといえる。 なお、これらの研究から得られた成果は、国内の学術雑誌への投稿および国内の学会・研究会での報告を通じて公開していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
最終年度となる平成25年度は、平成23・24年度の調査で収集されたデータを用いた実証分析を進め、研究過程とその時点での成果関連する学会(日本農業経済学会あるいは地域農林経済学会)や研究会において報告し、情報提供および研究交流の機会をもつこととする。そのため、平成25年度は、国内の学会大会・研究会への参加旅費を国内旅費として計上する。 その他、研究に必要な文献(図書・雑誌・論文など)や消耗品(プリンタ・トナー、PPC用紙など)を、必要に応じて適宜購入する。
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Research Products
(1 results)