2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23780240
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
栗田 匡相 関西学院大学, 経済学部, 准教授 (60507896)
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Keywords | 貧困削減 / カンボジア / ベトナム / タイ / 空間計量経済学 / ミクロ計量経済学 / 人口移動 / 農村開発 |
Research Abstract |
2013年度の研究成果は、3つに大別できる。一点目は、ミクロ計量経済学、空間計量経済学等の分析手法を用いた研究を、本研究課題が当初設定していたASEAN諸国のタイ、カンボジア、ベトナムのみならず、南アジアやアフリカといった他地域の調査や論文執筆、研究報告、などを行ったことである。当初の予定よりも研究の進捗状況が早いため、他地域での研究を積極的に進めたが、これによりASEAN地域研究へのフィードバックも生まれ、研究の外延的拡大とフィードバックという好循環が生じている。二点目は、2012年度に行ったカンボジアのコンポントム州の全調査世帯に、労働移動に関する再度の聞き取り調査を行った点である。1年半という短い間隔ではあったが、労働移動の目的地に大きな変化が見られた。首都のプノンペンの比率が大幅に減少し、国境を越えてタイへの移動が大幅に拡大していたことである。これにより送金等の金額が上昇していたが、同時に両親と暮らすことの出来ない子女の増加、米生産の停滞などが2012年の状況よりも、より深刻になっていることが理解できた。三点目は、本研究の成果を今後より一層深めていくために、ケニア農村、マダガスカル農村での世帯調査を行った点である。例えば、マダガスカルは、貧困者比率が80%弱と世界最貧国家の一つだが、その一つの要因として主食である米の農業生産性がかなり低いことがあげられる。農村経済の発展を、農業生産性の向上、都市部とのネットワーク(移動)、農村経済の多様化、という3つの軸から検証を行う本研究課題にとって、発展の初期段階にあるマダガスカル、ケニア農村での調査は、今後の研究の発展や、ひいてはアフリカの貧困削減に向けて極めて重要な意義を持つだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では当初「県別パネルデータを用いた貧困削減効果の寄与度分析」と「ベトナム・カンボジアにおける貧困削減と移動に関する分析」の2つの軸を中心に研究を進めている。このうち貧困削減効果の寄与度分解分析については、既にタイ、ベトナムの分析を論考としてとりまとめており、現在は、それら論考に空間計量経済学の分析手法を応用した英語の論考(2012年度のEast Asian Economic Associationの年次大会(シンガポール)で報告)の改善を行っている。また貧困削減と移動に関する分析では、2013年度に行ったカンボジアの再調査のデータを含めたミクロ計量経済分析を現在進めており、こちらも既に2つの論考を執筆し、現在論文の投稿段階にある。このように最終年度を待たずして、概ね当初予定していた論考を複数執筆出来たため、2014年度は、得られた知見を他地域へと応用していくことで、より発展的な研究を行うことも視野に入れている。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年度は、本研究課題の最終年度となるため、当初の予定通り主に研究成果のとりまとめを行うことになるが、既に複数の論考を執筆したことや、同時に本研究をより付加価値の高い研究とするために、海外での調査についても可能な限りで実施していきたいと考えている。現時点では、2014年9月に、カンボジアで3度目となる調査を行う予定である。この調査では、これまで調査を行ってきたコンポントム州だけではなく、その他の地域を中心に、国境を越えた移動についてと子供の健康についての状況を調査することにしたい。
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Research Products
(5 results)