2011 Fiscal Year Research-status Report
地域ブランド化における農商工連携関係構築についての複雑ネットワーク分析
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23780242
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
大西 千絵 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 九州沖縄農業研究センター・作物開発・利用研究領域, 研究員 (60466638)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 国際情報交流 / フランス |
Research Abstract |
フランス・コロブリエール村の栗と栗加工品の地域ブランド化と地域活性化の取組みを事例として、現地調査を基にネットワーク分析を行った。 まず、平成23年10月~11月にかけて、コロブリエール村で現地調査を実施した。栗農家、村役場観光課、コロブリエール村村長、栗組合、普及員、地域活性化リーダー(栗農家兼村議会議員)、栗愛好会、加工メーカー、加工グループ、直売グループ、観光業関係者等に対しヒアリングを行うとともに、、コロブリエール村役場・栗加工場資料館・栗の博物館に残る取組み当初からの資料等を収集した。 次に、調査結果をもとに、取組みを、「試行錯誤期」「発展期」「安定成長期」「転換期~現在」に分け、それぞれの段階ごとに、農商工連携関係についてネットワーク分析を行った。ネットワーク分析では、まず、連携関係の有無を行列で整理し、それをもとにネットワーク分析用ソフトPajekを用いてネットワークの数値化・可視化を行った。行列整理と解釈に関しては、一橋大学永島氏に助言いただいた。ネットワークの数値化では、画期ごとにネットワーク特性値としてノード数、エッジ数、クラスター係数、ネットワーク密度、平均パス長、拘束度を求めた。ネットワークの可視化では、ネットワークにおける構造的空隙を明らかにした。 さらに、ネットワーク特性値と構造的空隙の画期ごとの変化を明らかにした。そして、特に拘束和の変化から、5つの仲介役割(コーディネータ、部外仲介者、代表者、ゲートキーパー、リエゾン)を果たした主体と、拘束和の減少している主体を明らかにした。これらの主体がネットワークの質的変化に関係していると考えられるため、来年度はこれらの主体に対して、定性的な調査・分析を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、今年度は過去30年間におよぶ連携関係の調査と、調査結果についての定量的分析であった。 連携関係の調査については、取組み開始時のリーダー(栗農家)がすでに他界していたが、リーダーとともに30年前に取組みを立ち上げた時の主要メンバーや、リーダーの娘さんから情報収集することができた。また、これまでの取組みの変遷についても、栗組合、普及員、村議会議員、村の高齢者らで結成されている栗愛好会から情報収集することができた。さらに、村役場観光課や村長から協力を得て、取組みの変遷に加え、地域活性化に関わる支援状況(コロブリエール村、コロブリエール村のあるVar県およびProvence-Alpes-Cote d'Azur地域圏から支援あり)を明らかにすることができた。また、村内の栗加工メーカーへのヒアリングでは、村内および近隣の町村の栗農家との連携関係に加え、輸出も含めた販路を明らかにすることができた。ただし、調査に行ってからさらに一件の連携先が判明し、他市町村にある加工メーカーであったため調査できなかった。この加工メーカーについては、平成24年度にヒアリング調査を行う。 そして、調査結果をもとに、定量的分析により、ノード数、エッジ数、クラスター係数、ネットワーク密度、平均パス長、拘束度についてのネットワーク特性量の変化を明らかにするとともに、可視化を行い構造的空隙の変化を明らかにした。また、平成24年度の定性的分析と定性的分析に関わる調査を実施するために、仲介役割を果たした主体と、拘束和が減少している主体とを明らかにする必要があったが、これらの主体をネットワーク特性量の変化から明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の調査結果および分析結果をもとに、事例について定性的分析を行う。 まず、仲介役割を担った主体と拘束和が著しく減少した主体に対し、ヒアリングを行う。ネットワーク分析の結果、仲介役割を担った主体である普及員、栗組合組合長、栗農家M、加工メーカー、栗愛好会と、拘束和が著しく減少していた直売グループ参加の4農家(栗農家)、加工グループの中核である新規参入農家C氏等に対し、さらに詳細な調査を行う。仲介役割を担った主体については、ある主体が他の主体と連携する際の仲介役割について、契機、手順等を明らかにする。拘束和が減少した主体については、ある主体が、何の要素を使用するために、どの主体と連携したかについて明らかにし、連携前後の変化を定性的に明らかにする。さらに、平成23年度に調査のできなかった加工メーカーへも調査を行う。また、地域活性化と地域ブランド化についての消費者の評価を明らかにするために、コロブリエール村役場と共同で来村者アンケートを実施する。 そして、その結果をもとに、ネットワークを構成する各主体の持つ質的な要素を、平成23年度に整理したネットワーク構造に付加する。具体的には、ノードにラベルを付け、重み付けを行うことによって、ネットワークに質的な情報も付け加える。 さらに、フランス国立農学研究所 (INRA) のパスカル氏、シフォロー氏と、フランスにおける地域ブランド化や地域活性化の取組み、ネットワーク分析について情報交換を行う予定である。 そして、平成23年度、平成24年度の研究結果から、農産物・農産物加工品の新たな地域ブランド化における農商工連携関係構築について、ネットワーク構造と競争優位性をもたらす要素の変化に着目した、農商工連携モデルを構築する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究費は、旅費40万円、通訳・翻訳料8万円、来村者調査経費2万円の予定である。旅費と通訳・翻訳料は、平成23年度の費用を参考にしている。旅費については、フランス:コロブリエール(事例)、セヴェンヌ(加工メーカー)、モンペリエ(INRA)での調査、情報交換時に使用する。通訳・翻訳料に関しては、ヒアリング調査時の通訳に加え、アンケート調査表作成時の翻訳、調査に先立つ準備、アポ取り等のコーディネート等について、通訳社のタエコ・ペリン氏へ支払う。来村者調査は村役場と共同で行うが、アンケート用紙・アンケートに関わる物品(筆記用具等)の購入に充てるものである。
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