2011 Fiscal Year Research-status Report
硝酸汚染の緩和・予防に向けたカイロの再利用に関する検証と溶質動態推定手法の開発
Project/Area Number |
23780246
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
井上 一哉 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (00362765)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 硝酸性窒素 / 鉄粉 / カイロ成分 / 数値解析 / 還元 / ランダムウォーク粒子追跡法 |
Research Abstract |
農地における過大な施肥の使用や畜産排泄物の不適正な地下浸透は地下水中の硝酸性窒素濃度の上昇につながる主たる要因であるものの,窒素源は面的に散在して分布することから,広域にわたる地下水の硝酸化防止は困難である.地下水の硝酸汚染に対する既存の処理方法には生物学的脱窒やイオン交換などがあるが,農地などの広範囲にわたる汚染源での硝酸濃度の低減を目的とした方法ではない.本研究では,循環型社会の構築への貢献を視野に入れて,硝酸濃度の低減に向けた使い捨てカイロの再利用の可能性について検討した.特に,カイロの主要成分である鉄粉に焦点を当てることで,混合地盤と層地盤による鉄粉の効果の違いを比較した.また,カイロ鉄粉に加えて,市販の鉄粉を使用し,鉄粉の性能を評価した.カラム浸出液に含まれる硝酸性窒素濃度の時間変動を計測し,時間モーメント法を導入することで,遅延係数ならびに,減衰定数を定量化した.その結果,鉄粉を土質試料に混合する割合が増加に伴い,減衰定数は上昇し,硝酸の還元効果が高まることがわかった.また,水分条件に関わらず硝酸の還元によりアンモニアが生成され,時間モーメント法をマスバランスの定量化に応用した結果,層状態で鉄粉を混合するケースの方がアンモニアの生成量は大きくなる結果を得た.加えて,飽和条件は不飽和条件よりも遅延の効果は大きく,カイロ成分,あるいは,鉄粉の混合方法を勘案することで,硝酸汚染の緩和に向けた使い捨てカイロの再利用の可能性が示唆された.加えて,硝酸性窒素の広域輸送に関する数値解析手法を発展すべく,溶質のマクロ分散を評価可能なランダムウォーク粒子追跡法を開発した.実フィールドの透水係数データを用いた解析の結果,不均質度合いに応じたマクロ分散の進展を評価できた.また,取水井における濃度変化に基づいてマクロ分散を推定する数値モデルを構築した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
物質輸送実験ならびに数値解析の開発状態は計画的に進行していることから,おおむね順調と判断される.
|
Strategy for Future Research Activity |
フィールドにて採取した土質試料を用いて同様のカラム実験を実施することに加えて,フィールドでの物質移動実験を検討する.また,硝酸,ならびにアンモニアの水質分析定果を逆解析と時間モーメント解析にて定量化する流れを構築する.さらには,ラボ実験の結果と比較して,フィールドの特性を抽出し,同時に,非破壊分散推定手法のフィールドへの適用性を検証する.加えて,数値解析的側面から,開発中のランダムウォーク粒子追跡法によりマクロ分散変動を追随し,時間・空間モーメント法と連携して,アンモニアと硝酸の同時輸送 を捉えるUpscale 型粒子追跡解析の基盤を形成する.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
フィールド実験をセットアップし,実験の遂行を可能にするため,ミニテンシオメータ,ならびに5TEセンサーを購入し,それらの配備案を検討する.また関連して,実験実施の補助謝金の拠出を予定するとともに,予備・本番実験に向けて実験補助材料,水質分析のための試薬を購入する.前年度と当該年度の研究成果の発表ならびに情報収集のため,国内学会や国際シンポジウムに参加する.
|