2013 Fiscal Year Annual Research Report
硝酸汚染の緩和・予防に向けたカイロの再利用に関する検証と溶質動態推定手法の開発
Project/Area Number |
23780246
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
井上 一哉 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (00362765)
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Keywords | 硝酸性窒素 / 使い捨てカイロ / 再利用 / 還元 / 時間モーメント解析 / 地下水汚染 / 吸脱着 |
Research Abstract |
農耕地において作物に必要な窒素の天然供給量は少なく,窒素化合物は農業生産に不可欠な生産資材である.しかしながら,過剰施肥や畜産排水により土壌・地下水中の硝酸性窒素濃度は上昇し,地下水を利用する家畜・人体への悪影響が危惧されている.本研究では,硝酸性窒素の地盤内移行速度ならびにピーク濃度の低減に向けた使い捨てカイロ成分の再利用の可能性について評価すべく,使用後のカイロ成分をケイ砂または黒ボク土と混合した地盤を対象に溶質輸送実験を実施した. 時間モーメント解析を応用して移流分散パラメータを同定した結果,カイロ混合比に応じて遅延係数は変化し,ケイ砂地盤は黒ボク土地盤より高い遅延効果を示し,ケイ砂のような砂質系地盤ではカイロ成分の混合量の増加に応じた吸着効果が得られた.また,試料の表面積に依存する分配係数と遅延係数の関係を求めると,分配係数と遅延係数の関係は試料ごとに異なり,分配係数の高い黒ボク土の方がケイ砂地盤よりも多様な溶質移動経路を有することがわかった. 加えて,鉄粉単独の効果について定量化する目的で,カイロ用鉄粉を混合した地盤と鉄粉の層を入れた地盤を対象として,混合地盤と層地盤による鉄粉の効果の違いを異なる水分条件下で比較した.その結果,飽和状態では,鉄粉の質量比の増加に伴って,遅延係数は増加する傾向が見られ,不飽和状態では飽和状態よりも遅延係数は小さく推定された.また,鉄粉の混合比の増加に伴い,減衰定数は増加傾向となる結果を得た.さらには,水分条件に関わらず硝酸性窒素の還元によりアンモニア性窒素が生成され,鉄粉の混合比の大きい場ほどアンモニア生成量は大きくなることが確認された.以上の議論より,カイロ成分,あるいは,鉄粉の混合方法のみならず,地盤特性を勘案することで,硝酸汚染の緩和に向けた使い捨てカイロの再利用の可能性が示唆された.
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