2011 Fiscal Year Research-status Report
沖縄地方の農地水系における大気・水環境に配慮した沈砂池の維持管理に関する研究
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23780253
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
仲村渠 将 琉球大学, 農学部, 助教 (70537555)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 沈砂池 / 流れ場 / 押出し流れ / 表面負荷率 / 水理実験 |
Research Abstract |
(1)研究実績その1:水理実験装置の製作 沈砂池の流れ場の性質を調べるために使う水理実験装置を製作した.実験装置は,水平にした実験用開水路(幅40cm,深さ40cm,長さ8m)を流入境界と流出境界で仕切った長さ6mの区間(以降,供試区間)を構造を単純にした沈砂池とみなしたものである.流入境界と流出境界には多孔整流板または全幅堰を用いている.給水管に取り付けた電磁流量計で流量を計測することができ,供試区間の上・中・下流の水面上に取り付けた超音波センサで水面変位を計測することができる.この水理実験装置の意義は実際の沈砂池の流れ場をできる限り再現した水理実験を実施できることである.この水理実験装置は現在の設計では考慮されていない非定常流量と流入出構造を実験条件にすることができるため,非定常流量と流入出構造の影響を受けた実際の流れ場を調べるうえで重要である.この水理実験装置を用いた水理実験の結果は貯留メカニズムの把握に寄与する.(2)研究実績その2:定常流量(Q=1.7L/s)を実験条件とした場合の流れ場の性質 水理実験装置を使って水理実験を実施し,定常流量を実験条件とした場合の流れ場の性質を把握した.流入境界と流出境界の流れを実際には起こり得ない一様流れとした場合,供試区間全体でほぼ理想的な押出し流れが形成された.流入境界を自由落下流れにした場合,鉛直縦断面内を循環する流れ場が上流域に形成された.また,流出境界を堰流れにした場合,堰近傍に上向きの流速が生じた.いずれの場合も中流から下流付近にかけてほぼ理想的な押出し流れが形成された.以上の結果から,設計で想定している乱れのない一様な流速分布をした押出し流れは実際の沈砂池では部分的にしか起こらないことが明らかとなった.自由落下流れや堰流れは押出し流れ区間を縮小させて表面負荷率を小さくするため,沈砂池の機能低下を招くことが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の研究計画には水理実験装置の製作(70%),水理実験(20%),数値実験(5%),現地調査(3%)およびカラム実験(2%)が計画されていた.これらの研究計画の内,水理実験装置の製作を完了させたが,流量制御装置の設計・製作に予定以上の時間と経費を費やすこととなり,水理実験,数値実験,現地調査およびカラム実験の進捗に影響した.水理実験に関しては,定常流量を実験条件とした場合の実験を完了させたが,水理実験装置の完成が遅れたことにより非定常流量を実験条件とした実験に取り組むことができなかったため,水理実験の進捗は10%となった.数値実験に関しては,水理実験装置の製作に経費を費やしたことによりシミュレーションソフトの購入を断念したため,具体的な数値計算に取り組めなかったが,机上で数値モデルの構築に取り組み,数値実験の進捗は2%となった.現地調査に関しては,研究計画において調査対象として選定していた沈砂池を調査した.その調査の結果,水生植物が沈砂池の貯水に過剰繁茂していることが明らかとなり,測定機材の設置や測定精度の観点からN2Oの現地測定に適さない状況であると判断した.そのため現地調査はほとんど進捗しておらず,現状を考慮して現地調査を縮小する方向で現地調査計画を見直した.現地調査に並行して実施する予定であったカラム実験も進捗していない.以上より,本年度の総合進捗は82%となる. 本年度の研究計画は研究目的全体の30%を占めるが,本年度の研究計画の総合進捗が82%であったため研究目的の達成度は25%となる.そのため,自己点検による評価区分を「(3)やや遅れている」とした.
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Strategy for Future Research Activity |
今後,本研究課題では水理実験,数値実験,現地調査およびカラム実験を実施する.加えて,これらの実験・調査で得られたデータを解析し,途中成果を学会発表する. 水理実験,数値実験およびカラム実験の実験計画はすでに出来上がっており,今年度の遅れを取り戻すよう足早に計画を推進していく.現地調査については,調査現場となる沈砂池の状況が良くないため,貯水と貯留土のサンプリングのみを行い,貯水からのN2Oガスフラックスを現場測定しない計画に変更した.N2Oガスフラックスを現場測定する代わりに,水理実験とカラム実験の結果と貯水サンプルの溶存N2O濃度を用いて,貯水からのN2Oガスフラックスを間接的に検討する. なお,本研究課題応募時点の申請経費は4,969千円であったが,3,500千円に減額交付となったことから,研究目的の達成に影響しないよう水理実験装置と現地調査の規模を縮小することによって経費減に対応している.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究経費の所要見込額は880千円である.内訳は,水理実験,カラム実験および現地調査に使われる消耗品費に160千円,水質分析に300千円,学会発表旅費に200千円,実験補助員への謝金に220千円である.なお,数値実験には私費を投資してシミュレーションソフトを導入するため,数値実験には研究経費を使わない. 平成25年度の研究経費の所要見込額は800千円であり,内訳は平成24年度とほとんど同じである.
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