2011 Fiscal Year Research-status Report
リモートセンシングと作物モデルを用いた水稲の生育と収量の高精度予測
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23780263
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
牧 雅康 京都大学, 地球環境学堂, 助教 (50375391)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | リモートセンシング / 作物生長モデル |
Research Abstract |
平成23年度は、主に京都大学の圃場において、様々な品種及び施肥条件での稲の栽培実験を行った。そして、リモートセンシングデータを用いて、葉面積の変化を推定する植生指標について検討した。その結果、既存の研究で用いられている植生指標よりも、田植えから出穂期までの稲の葉面積の時系列変化を高精度に推定することが可能な指標を開発することが出来た。これにより、次年度以降の検討課題である「稲の生育・収量予測モデルとリモートセンシングの同化」において、リモートセンシングが果たす役割として期待される観測時刻における正確な生育状況の把握が可能になると考えられる。また、対象地域であるタイ国内の灌漑地区において、可視・近赤外カメラを用いて上空から生育状態が不均一な水田を撮影し、得られた画像に対して本研究で開発した指標及び既存の植生指標を適用した。そして、水田内の葉面積のバラツキの推定について検討した。その結果、最も水田内の葉面積のバラツキを推定することが可能であったのは、本研究で開発した指標であった。このことから、本研究で開発した指標は、葉面積の時系列変化推定のみではなく、空間内での生育ムラの把握についても可能であると考えられる。さらに、本研究の対象地域であるタイ国内の灌漑地区において、過去の栽培状況及び収量についてのアンケート調査を幾つかの農家に対して行い、対象地区内の大まかな農事暦及び作付け環境について把握することが出来た。これにより、次年度以降に計画している「衛星データを用いた農事暦(特に田植え時期)の推定」に関する検証データの一部を収集することが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の主な成果は、リモートセンシングデータから稲の葉面積の時系列変化および空間分布を推定するための植生指標を開発したことであり、これは、平成23年度の主な目標である「圃場での分光計測に重点を置き、リモートセンシングデータから稲の葉面積を高精度に推定する手法を開発すること」を達成したと考えられる。また、その他の目標についても、栽培実験や現地調査によって今後の検証に必要な情報収集を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、平成23年度に得られた成果を活用するため、まず作物生長モデルと開発した指標との同化について検討する。そのために、圃場での栽培実験および分光計測は継続して行う。さらに、圃場において開発した手法をタイ国の対象地域へ展開するために必要な水田マップを作成するため、衛星画像から水田の分布を推定し、分類精度の検証を行う。そのために、現地でのGPS計測を行う。また、その際に農家へのアンケート調査も行い、農事暦、栽培方法や収量等についての聞き取り調査を行う。この情報は、高時間分解能衛星画像から推定する農事暦の検証に用いる。そして、最終的には、対象地域において、リモートセンシングデータと作物生長モデルによる収量予測を行う。さらに、無人空撮機器を用いた高分解能の空撮画像の撮影も行い、衛星画像を用いた場合と同様に収量予測を行う。これにより、空間分解能の観点から衛星データを用いた際の精度評価に必要な情報を収集する。なお、無人空撮機器の利用については、当初の予定には含まれていなかったが、衛星画像を用いた際の精度評価、特に誤差の要因の検討に利用する価値は高いと判断したため、利用することとした。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、衛星画像による水田抽出のために衛星画像を購入する必要がある。また、衛星画像による水田抽出結果の検証データの収集及び農家へのアンケート調査のため、複数回の現地での調査も必要となる。さらに、無人空撮機器による撮影は、高度な技術を必要とするため、専門家による操作が必要となる。よって、平成24年度の研究費は、主に衛星画像の購入及び現地調査に関わる旅費や人件費等に使用する予定である。なお、検証に用いる現地データの収集は、単年分だけでは不十分であるため、翌年度も定期的な現地調査を継続し、検証用データの質及び量の向上を図る予定である。
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